秋田商が県大会史上初の延長タイブレークを制し、準々決勝に駒を進めた。最速141キロの左腕エース成田翔(3年)が3安打15奪三振で2失点完投。7回裏に同点打、11回裏には敵失を誘う“サヨナラ打”も放ち、大館工を振り切った。

 秋田商の背番号1が投打で活躍した。2-2の延長11回裏2死一、二塁。6番成田翔が初球を左前にはじき返し、相手左翼手が打球処理をもたつく間に三塁走者がサヨナラのホームを踏んだ。7回2死二、三塁で同点打も放った成田翔は「自分が決めれば2年生もついてくると思って食らいついた」と上級生エースの役割を果たした。

 投げては、味方打線が6回まで無安打に抑え込まれる状況下で踏ん張った。この日最速の140キロを含め、序盤から135キロ超の速球を連投。2回表2死からは5者連続空振り三振に仕留めた。5回と6回に失点したが、大崩れすることはなかった。無死一、二塁から始まる初体験の延長タイブレークにも「とにかく腕を振って、打たれてもいい気持ちで思い切り投げた」とマウンドを守りぬいた。

 同校OBのヤクルト左腕石川雅規と小柄な体形も一緒で、「石川2世」と期待される。成田翔は「もっと投球術を学んで石川さんを追い越せるピッチャーになりたい」と目標にする。その石川と高校時代にバッテリーを組んでいた太田直監督(36)からは「まだ完封できる投手じゃない。最少失点に抑えるように」と指示されている。昨秋まではスタミナ不足で終盤に崩れることが多かったが、冬場の下半身強化で球速もアップさせた。

 1年夏の甲子園2回戦では背番号10で富山第一戦に救援。2回を1安打無失点に抑えた。今日23日の準々決勝では今春センバツ出場の大曲工と戦う。背番号1で2年ぶりの全国マウンドを目指す成田翔は「勝ち投手になることが大事。エース番号に負ける試合は許されない」と闘志を高めた。【佐々木雄高】

 ◆成田翔(なりた・かける)1998年(平10)2月3日、秋田市生まれ。保戸野小4年から野球を始める。秋田商では1年春からベンチ入りし、同年夏の甲子園に背番号10の控え投手で出場。2年秋からエース。家族は祖父母、両親、妹。左投げ左打ち。169センチ、70キロ。血液型B。

 ◆延長タイブレーク 東北6県では、今春から秋田大会でのみ導入。9回を終えて同点の場合、延長10回前に打順申告を行い、それぞれ無死一、二塁の場面から攻撃を始める。地区予選ではすでに県南地区の大曲-大曲農戦で適用されており、大曲が4-3で勝利した。