先天性の難聴で両耳が聞こえず、言葉も話せない大森(東東京)玉田宙(ひろ)捕手(3年)が、8回に中越え適時三塁打を放つなど、勝利に貢献した。

 玉田の適時打など、1点リードの8回に3点を奪い、試合を決定的にした。

 岩崎剛監督(43)は「いい環境でやらせてもらって、生徒がよく頑張ってくれた。それがいい方向に出ている」と喜んだ。

 「5番捕手」として、チームの主力の玉田。聴力がないことが分かったのは1歳10カ月の時だった。高校入学前には、ろう者の仲間と一緒に軟式野球を続けるか、硬式野球に挑戦するかの選択を迫られた。母さとみさん(53)は「初めて泣きました。夢を取るか、仲間を取るか」と悩み苦しんだと振り返る。最後は「耳が聞こえなくても硬式野球が出来ることを証明したい」と決断し、新しい道に飛び込んだ。

 選手とのコミュニケーションはジェスチャーや筆談で取り、試合後の取材は筆談で答える。そんな環境で努力を続け、昨秋から捕手のレギュラーをつかんだ。

 次戦は強豪関東第一と対戦する。