高校野球100年の夏に、春夏通じて全国トップの通算11度の優勝を誇る名門が帰ってくる。全国高校野球選手権大会(8月6日開幕、甲子園)の愛知大会の決勝が行われ、中京大中京が愛工大名電に逆転勝ちを飾った。全国最多189校がひしめく愛知を制し、5年ぶり27度目の夏の甲子園出場を決めた。

 マウンドに歓喜の輪が出来た。9回2死一塁。背番号1の主将、上野翔太郎投手(3年)が最後の打者を二飛に打ち取ると、ナインが駆け寄ってきた。5年ぶりの甲子園切符をつかんだ立役者は、輪の中心となった救援登板の上野だった。

 出番はすぐにやってきた。先発した長谷部銀次投手(2年)が初回に3ランを浴び、2回1死一、二塁の場面でマウンドに上がった。グラブに「冷静沈着」と刺しゅうしている上野は「やることをやってきたので焦ることはなかった」。冷静に後続を打ち取り、その後も0行進。チーム打率4割2分9厘と強打の愛工大名電を7回2/3、2安打無失点と寄せつけなかった。

 上野は初戦の3日前に腰痛を発症していたが、痛みに耐えながらチームをけん引。その奮闘に4番がバットでこたえた。2点を追う3回、4番伊藤寛士捕手(3年)が高校通算44号となるソロアーチを左中間席に運んだ。伊藤は7回2死二塁で左中間へ同点二塁打を放つと、続く矢田崎明土内野手(3年)の中前適時打で決勝ホームを踏んだ。

 エースを軸にした逆転劇。10年秋から指揮を執り、初の甲子園出場を決めた高橋源一郎監督(35)は「上野と心中するつもりだった」と明かした。1931年(昭6)から史上唯一の夏3連覇を飾るなど通算11度(春4度、夏7度)全国のトップに立った名門。上野は「今日みたいな投球をすれば負けない」。直近の全国制覇は、現広島の堂林翔太を擁して頂点に駆け上がった09年。あの夏の再現を狙う。【桝井聡】

 ◆中京大中京 1923年(大12)に中京商業学校として創立された私立校。95年に現校名となる。生徒数は1306人(女子775人)。野球部も学校創立と同時に創部。部員は79人。卒業生には広島堂林翔太、フィギュアスケートの浅田真央ら。所在地は名古屋市昭和区川名山町122。大竹有二校長。

◆Vへの足跡◆

3回戦7-0津島北

4回戦6-1西春

5回戦9-2豊橋中央

準々決勝5-1愛知産大三河

準決勝10-3東邦

決勝4-3愛工大名電