プロ野球ドラフト会議が明日22日、東京・グランドプリンスホテル高輪(午後5時開始)で行われる。日刊スポーツ東北版では「みちのく選手 運命の日」と題し、高校・大学の注目選手を2回に分けて紹介します。第1回は、この夏U18W杯の高校日本代表として活躍した仙台育英・佐藤世那投手、平沢大河内野手、秋田商・成田翔投手、花巻東・高橋樹也投手(すべて3年)の「みちのく日の丸カルテット」。ドラフトを直前に控えた4人それぞれの思いに迫ります。

 ◆評価にとまどいも/仙台育英・平沢大河内野手

 地元宮城の球団・楽天は、既に平沢の1位指名を公言している。そんな“ラブコール”は本人の耳にももちろん届いている。「ありがたい」と喜ぶと同時に「評価だけ上がっている感じで、それに実力が伴っていない。逆に不安です」と戸惑いもあるようだ。

 今は「プロに入って苦労しないように、基盤となる体作りをしないといけない」と、毎日学校の室内練習場にあるロープを上り下りして、体を鍛える。甲子園3本塁打をマークした長打力に、範囲の広い守備と強肩。センスあふれる高校屈指の遊撃手ながら、常に人一倍の努力を自分に課す。それが平沢の1番の才能かもしれない。

 楽天の本拠地コボスタ宮城は、宮城県の高校野球大会でもよく使われており、平沢にとっては高校1年から慣れ親しんだ“ホーム”だ。「親しみがあります。来年は天然芝になるようですし、またコボスタでプレーするのが楽しみです」と話す。楽天、他球団にかかわらず、プロに入れば再び思い出の地で、ファンにプレーを見せることになりそうだ。「人間的にも成長したい。1日でも早く1軍に入りたい」と、もう目線は先を向いている。

 ◆投げ方変えない/仙台育英・佐藤世那投手

 佐藤は「不安です…」と素直な気持ちを口にした。同じ仙台育英の遊撃手平沢が高い評価を受ける一方、自分がそこまでの評価ではないことを肌で感じている。「できれば2人で選ばれたい」と期待を胸に、ドラフト当日を迎える。

 湯船の中で、水を入れた牛乳瓶を人さし指と中指にはさみ、上げ下ろしする。中学の時、桑田真澄氏に影響され始めたこのトレーニングが、代名詞であるフォークを生んだ。U18W杯では、その鋭く落ちるボールで米国やカナダの強打者を手玉に取り、日本のエースとして準優勝に貢献した。

 高校では最速146キロの直球とフォークが主体だったが「生きていくためにいろんなものが必要」と今後は、使える変化球を増やしていく構えだ。憧れるのはオリックス金子千尋と広島前田健太。「何を投げても的を絞らせない投手になりたい」と理想を語った。

 右肘を大きく後ろに引く独特のフォームは魅力的であると同時に、体を壊しかねない弱点にも受け取られる。だが佐藤はこうはっきり言う。「昔からこの投げ方を変えようと思ったことはない。どういうフォームでもやっていけることをプロの世界で示したいです」。

 ◆CSで投げたい/秋田商・成田翔投手

 最速144キロ左腕はプロ1本に絞って運命のドラフトを待つ。この日、秋田市内の同校グラウンドで「不安と楽しみの気持ちの両方です」と話した。身長168センチと小柄ながらキレのいいスライダーを武器に今夏の県大会で39回55奪三振。甲子園でも龍谷(佐賀)戦で秋田県勢甲子園最多の16三振を奪い、一躍脚光を浴びた。チームを80年ぶりの甲子園8強にけん引。U18W杯でも活躍した。

 社会人入りが有力だったが、甲子園や日本代表で刺激を受け、プロへの夢が膨らんだ。「小学生のころからの憧れでした。自分で決めたことなので責任を持ちたい。(指名)順位は関係ない。どこの球団でも、入ったら早く上に上がって結果を出したい」と夢を広げた。

 一方で「今までで一番緊張しています」と不安も隠さない。ただ一途にプロ指名を信じ、体力強化中心の練習を毎日2~3時間こなし、プロになる準備を進めている。「向かっていく気持ちは負けない。先発を任されたら100勝投手を目指したい」とアピール。さらに「いつか自分もクライマックスシリーズで投げたい」と、高校の大先輩、ヤクルト石川を目標に掲げた。

 ◆世那と成田に刺激/花巻東・高橋樹也投手

 日本ハム大谷、西武菊池らスター投手を輩出してきた花巻東から、また1人プロ選手が生まれようとしている。高橋のプロへの思いを後押ししたのは、世界の経験だ。「U18に選ばれて(プロに)行きたい気持ちが強くなりました」。U18W杯では、3戦6回無失点と左の中継ぎとして活躍。強豪社会人からのオファーがあったこともあり、しばらく進路は決まらなかったが、佐々木洋監督(40)、両親との話し合いを重ね、志望届提出期限数日前に結論を出した。

 低めに変化球を集められる制球力が高橋の武器だ。プロ入り後を見据え、今も高い意識で練習を続ける。「幅広い投球ができるように」と、最も熱心に取り組んでいるのが左打者へのチェンジアップ。参考にするのはともに日の丸を背負った東海大相模・小笠原慎之介の投球だ。「自分はまだ世那と成田に負けている」と同じ東北の2投手の存在も刺激になっている。

 生まれも育ちも岩手・花巻市。好きな食べ物を聞くと恥ずかしそうに「ひっつみ、です」と、小麦粉の団子が入った汁物の郷土料理を挙げた。「自分が雄星さんに憧れたように、後輩に目標とされる選手になりたい」と目を輝かせた。【高場泉穗、佐々木雄高】

 ◆ドラフト展望 東北の高校生1番の目玉は、仙台育英の遊撃手平沢だ。今夏は甲子園で3本塁打を打ちインパクトを与えただけでなく、直後のU18W杯で木製バットへの対応力の高さを見せつけ、評価をさらに上げた。既に楽天が1位指名を宣言しているが、高卒のスター候補とあって競合もありうる。投手では、秋田商・成田、花巻東・高橋の将来性豊かな両左腕を数球団がリストアップしており、指名は確実。高校日本代表のエース右腕仙台育英・佐藤世も10球団から調査書が届いており、指名がありそうだ。パンチある打撃が魅力の山形中央・青木、守備に定評のある聖光学院・佐藤都の捕手2人も、下位指名の可能性がある。