第98回全国高校野球選手権(7日開幕、甲子園)に出場する南北海道代表の北海は5日、対戦校決定から一夜明け、兵庫県尼崎市内のグラウンドで、さっそく相手投手を想定した打撃練習に着手した。196センチの長身右腕、アドゥワ誠(3年)擁する松山聖陵(愛媛)と対戦する南代表の北海は、“北海のアドゥワ”と命名された身長185センチの阪口皓亮(こうすけ)投手(2年)が対策の切り札に。打撃投手として主力相手に100球近くを投げ込んだ。

 全国最多37度の出場を誇る北の古豪北海が、出場49校中、最長身の右腕攻略へ、さっそく動き始めた。打撃練習で投手を務めたのは、背番号のない阪口。練習補助員としてチームに帯同していたが、185センチの長身を買われ、松山聖陵アドゥワ対策に一肌脱ぐことになった。主力相手に投げた球数は、100球近く。マウンドのない真夏のグラウンドという過酷な環境も、チームの勝利を信じて、アドゥワになりきった。

 前日4日に行われた組み合わせ抽選会の後、同学年の佐藤大雅捕手(2年)や下方(げほう)忠嗣右翼手(3年)らチームメートから「お前は北海のアドゥワだ」と命名された。忠実な裏方は「今日はアドゥワ投手になりきって投げました」と、爽快に笑う。チームでは長身の阪口だが、ナイジェリア人の父を持つ本家には11センチも及ばない。動画などで実際の投球をチェックし、少しでもまねるために「いつもよりステップ幅を縮めて、出来るだけ上から投げるよう気をつけました」と、工夫を凝らした。

 1日に関西入りしてから、フリー打撃での“登板”は、この日が初めて。平川敦監督(45)は「上から来る(球の)角度に気をつけて打撃をするのが狙い」。選手には「見下ろすイメージで打て」と指示が飛んだ。マウンドに立てば2メートル超の高さから投げ下ろされる直球を、いかに上からたたくか。フライは厳禁だ。

 細身の長身で、イメージは近い。さらに「自分と森さん(勇太=3年)が試合前に打撃投手をすると、チームが勝つんです」と阪口。この日も、2人そろって打撃投手を務めた。予定通り日程を消化すれば、本番は12日。背番号のない隠れた切り札が、難敵攻略の鍵を握る。【中島宙恵】

 ◆アドゥワ誠(まこと) 1998年(平10)10月2日、熊本市生まれ。出水南小1年の時に熊本中央リトルで野球を始め、出水中では熊本中央シニア。松山聖陵で1年秋から登板。兄大(まさる)さん(東農大北海道2年)は九州国際大付(福岡)で甲子園出場。196センチ、86キロ。右投げ右打ち。