<高校野球南北海道大会:北海4-0札幌光星>◇24日◇札幌地区2回戦

 古豪・北海がエース鍵谷陽平(3年)の力投で夏34度目の甲子園へ発進した。札幌光星戦に先発した鍵谷は、最速143キロの速球で真っ向勝負。奪三振13、被安打3、与四球1と「プロ注目」に恥じない投球を見せた。打っても2打点を挙げる活躍で4-0の勝利に貢献。七飯町から北海にあこがれて入学した軟式上がりの“雑草”が、9年ぶりの聖地へチームを引っ張る。

 9年ぶりの聖地を目指し、北海の鍵谷が初回から飛ばした。相手打線がスライダーにまったく手を出さないとみると、速球主体に切り替えて3回までに7奪三振。中盤でペースは落ちたが、本来「理想の投球は(9回を)27球で終わらすこと」と言う男だけに、三振に固執はしない。丁寧にコーナーを突き凡打の山を築いた。終わってみれば外野への飛球は安打を含め5つだけ。三塁を踏ませない快投だった。

 自らのバットでも勝ちを呼び込んだ。1点リードの2回裏、2死二塁から右前にしぶとく落とし、立島達直捕手(3年)を迎え入れた。6回裏には1死三塁で三塁前にスクイズを成功させ4点目。06年の南北海道準優勝校を、力でねじ伏せた。

 春の段階では力んで高めに球が浮く癖があったが、力を入れすぎないように投球フォームを調整。さらに会心の投球ができた時の自身のビデオや、プロの一流投手の投球を見ていいイメージをふくらませた。その結果、この日は「余裕を持つ。投げ急がない」と自らに言い聞かせてのマウンドだった。

 七飯中ではエースで4番だったが、近隣の函館市内の強豪ではなく、遠い北海を選んだ。「北海のユニホームがあこがれだった。それに地元にいると甘えが出て成長ができないと思った」。意識を高く持ち、遠く札幌に出ての下宿暮らし。北海には中学で硬式を経験している選手が多いが、軟式上がりということもハンディとしない。

 当然、プロも昨秋から注目。日本ハムの石川統括本部スカウトは「体に力がある。変化球に若干、制球の甘さがあるが、直球の安定感は十分」と素質を認めている。本人もプロ入りの夢はあり、この夏は最後のアピールの場でもある。「最後の夏に焦ってもしょうがない。楽しみながら甲子園を狙いたい」。雑草エースの右腕はまだまだうなりを上げる。【本郷昌幸】