<高校野球静岡大会:浜松湖東2-1富士宮北>◇18日◇2回戦

 創部9年目で初勝利を挙げた浜松湖東が止まらない。エース大塚浩貴投手(3年)が9回6安打1失点でプロも注目する富士宮北・佐野準哉投手(3年)に投げ勝った。1度はエース失格とされた右腕が、延長10回完投の1回戦に続き快投を演じた。

 仲間を信じて、投げ込んだ。1点リードの9回。先頭打者に中前に運ばれピンチを背負ったが、大塚は表情を崩さなかった。変化球を低めに集め2死を奪うと、最後は気迫のこもった直球で二飛に打ち取った。拳を突き出し、ほえるエースを中心に歓喜の輪ができた。「みんなが声をかけて支えてくれた。疲れたけど本当に楽しかった」。試合後、険しかった顔がくしゃくしゃになった。

 一瞬も気が抜けなかった。相手エースの佐野準は、この日もプロ2球団のスカウトが計測するスピードガンで最速145キロを記録する県内屈指の右腕。当然のように初回に挙げた2点を守る厳しい状況が続いた。

 それでも「意識はしなかった。とにかく自分の投球をすることだけを考えた」。持ち味の打たせて取る冷静な投球で、凡打の山を築いた。スコアボードに「0」を並べ、息詰まる投手戦に、無四球の84球でケリをつけた。

 春季大会では、自らの四球が原因でリズムを失い、地区大会1回戦で早々と負けた。菅沼大介監督(31)からは「ピッチャーをやめろ」とまで言われた。全体練習からも外され、グラウンドの隅で1日で100メートル、100本を黙々とダッシュした日々もあった。どん底からはい上がったエースに同監督も「1回戦も良かったが、今日は120点。気持ちの面でもすごく成長している」とたたえた。

 続く3回戦は、浜松工と対戦。ここまで2戦で215球を投げ抜いた大塚は「次も投げたい。1戦1戦全力でいきます」と、力強く言った。【前田和哉】