<高校野球佐賀大会:唐津商7-3佐賀西>◇21日◇準々決勝

 がばい剛腕が、2日間418球の熱投で熱戦を制した。佐賀大会は準々決勝で唐津商と佐賀西の延長15回引き分け再試合が行われ、プロ注目右腕、北方悠誠(3年)を擁する唐津商が勝ち、ベスト4に進んだ。前日257球で15回を投げきった北方悠は、この日も161球で完投。11奪三振10四死球と「大暴れ」し、甲子園へ前進した。

 2日間にわたった24イニング目は、豪快な終わり方だった。唐津商の吉原彰宏監督(36)が「自作自演だ」と苦笑いした、北方悠の暴れっぷり。5点リードの9回裏、先頭打者に死球を与えてリズムが狂う。次打者に安打でつながれ、連続四球で押し出し。「またやっちゃった」と北方悠。しかし、ここからの切り替えが、並の投手ではなかった。なお無死満塁から、クリーンアップを3者連続三振で激闘の幕引きをした。

 「珍しくない。いつもこんな投球だから、野手も慣れてます」と指揮官。この日の最速は146キロだった。力強いストレート中心に11三振を奪ったが、四死球も10。257球を投げ抜いた前日も、13四死球を与えた。どうしても球数は多い。それでも「疲れ、分かりません」と言ってのける。「馬力がありますから。多少、肩に張りがあった方が、力が抜けていい」と吉原監督の信頼は揺るがない。三振も多いが、四死球も多い。こんな荒々しさも、北方悠の魅力なのだろう。

 延長15回でも、体はへっちゃらだった。試合後はいつものように整骨院でマッサージを受け、風呂に入って眠った。ただ、風呂には長くつかった。「睡眠時間もいつもと同じ。朝起きてだるさとかもなかったです。慣れてますから」。強靱(きょうじん)な体が、強いボールを生む。佐賀西に許したのは6安打。まともな打撃をさせなかった。

 4番打者としても、2点先制打を含む2二塁打と責務を果たした。投げて打って、北方悠が試合をコントロールした。甲子園へ、あと2勝とした吉原監督は「この2日間、苦しんだのはいい経験になったかもしれない」と言った。その言葉を受け、北方悠は「はい、学びました。ピンチの時は気持ちで抑える!」。がばい剛腕は、418球を投げた後でも楽しげな顔で言った。【実藤健一】

 ◆北方悠誠(きたがた・ゆうじょう)1994年(平6)1月25日、佐賀県唐津市生まれ。小学校2年から軟式野球をはじめ、湊中まで遊撃手。高校から投手。1年夏からベンチ入り。2年春に背番号1。家族は両親と弟2人。180センチ80キロ。右投げ右打ち。