<高校野球春季岩手大会:花巻東10-0花巻農>◇8日◇花巻地区◇代表決定戦◇花巻球場

 登板機会を、自らのバットで失った?

 今秋ドラフトの超目玉、花巻東の大谷翔平投手(3年)が、花巻農戦に「3番右翼」で先発し、3ランを含む3打数3安打5打点の大暴れ。6回に登板する予定だったが、5回に自らの適時打でコールドゲームが成立してしまい、センバツ後の公式戦初登板はお預けとなった。それでも、練習試合での調子は上向き。23日開幕の県大会で、ピッチングでも本領を発揮する。

 会心の当たりが、皮肉にも大谷の登板機会を奪ってしまった。5回の第4打席。鋭い打球が二遊間を抜け、二塁走者が10点目となるホームを踏んだ。推定飛距離140メートル超の場外弾2発を放った6日の遠野緑峰戦を含め、「カーブをひきつけて打てて、一番良かった」ひと振りだったが、これでコールドゲームが成立。「打てなかったら、(6回にマウンドへ)上がる予定だった」だけに、納得の一打にも表情は少し複雑だった。

 後攻の花巻東は、4回に5点を奪って9-0。攻撃中、大谷はブルペンでキャッチボールを始めていた。しかし、あと1点が入らなかった。「4回で10点になったら(5回に)行く予定でした。まだ公式戦で投げてないので、投げたかった」。センバツ後の公式戦初登板は、県大会に持ち越しとなった。

 投げたい理由があった。センバツでは、踏み込む左足がインステップする悪癖も出て、本来の力を出せなかった。花巻に戻ってからは、下半身主導のフォームの固定に着手。左座骨負傷時にはできなかった長距離走も再開。得意のスライダーは「上からボールをたたけるようになるまで」封印。明確な目的意識を持ち「センバツよりは今の方が良い」状態まで上がってきた。

 打っては4回、高校通算47号となる3ランを右中間にぶちこんだ。地区予選2試合で6打数6安打9打点と、まさに“打ち出の小づち”状態だ。「高校BIG3」の1人、大阪桐蔭・藤浪晋太郎(3年)からセンバツで1発を放ち「藤浪君から打てたという自信もなくはない」ときっかけをつかんだ。そして、投げて味わったほろ苦さも忘れてはいない。悔しさを糧に取り組んだ成果をこの春、存分に発揮する。【今井恵太】