<春季高校野球静岡大会:静岡5-1静清>◇12日◇決勝◇浜松

 静岡が静清を下し、2年ぶり9度目の優勝を果たした。2回に1点を先制されたものの、直後の3回に1死一、三塁から2番平川真大(まさひろ)内野手(3年)が逆転の三塁打を放ち、その後も加点。守ってはエース渡辺義(せいぎ)投手(3年)が最少失点で完投した。圧倒的な強さで7年ぶり3度目の地区大会とのダブル制覇となった。両校は25日からの東海大会(岐阜)に出場する。

 静かな幕切れだった。最後の左飛を確認したナインは歓声を上げることもなく整列に向かう。殊勲打の平川は「東海大会で優勝しないと意味がない」とチームの思いを代弁した。地区大会から9連勝。82得点9失点でたどり着いた県の頂点も、ゴールではなかった。

 そんなナインも1点を追う3回には感情を爆発させた。先頭の渡辺が右安で出塁し、犠打と内野安打で1死一、三塁となり打席には平川。初球の高め直球を振り抜き左中間を破る逆転打だ。三塁へヘッドスライディングし、雄たけびを上げながらガッツポーズ。「あれは自然に出ちゃいました」と照れたが、6回にも2死二塁から左前打でこの日3打点。勝負どころでの高い集中力が際立った。

 主軸不在の危機も動じない。5日の準決勝で右手首を捻挫した中沢彰太外野手(3年)がこの日、大事をとりベンチにとどまった。それでも、準決勝に続き代役の3番菊池啓太郎外野手(2年)が3回に犠飛で平川をかえす。先発の9人で戦いきることが多い中、大舞台で出番が回っても「試合が始まったら緊張しない」と役割を果たす層の厚さ。静清のスタンドからも「静高は強い」とため息が漏れた。

 とはいえ、その強さは静岡の選手が努力で培ったものだ。伝統校に豊かな才能が集まるのは間違いないが、グラウンドは他の部活と共用するなど決して環境は恵まれていない。だから、練習の質を高める。常に声を出し合い、いいプレーは褒め悪いプレーは指摘する。試合と同じ緊張感で競争するからこそ力がつく。昨秋の東海大会で初戦敗退してからは、さらに目の色が変わったという。主将の山田直(あたる)内野手(3年)の「夏までずっと無敗で行く」という言葉も重みが違う。

 その前には、ジンクスも立ちはだかる。春の県優勝校で夏の甲子園に出場したのは過去2校だけだ。それすら吹き飛ばす可能性を感じさせる高い意識。今日13日に行われる静岡商との定期戦(島田球場)でも、勝利への執念は変わらない。【石原正二郎】