<センバツ高校野球:仙台育英7-2創成館>◇25日◇2回戦

 仙台育英(宮城)のドラフト上位候補、4番上林誠知外野手(3年)がワンバウンドのボールを打ち返して春の聖地を沸かせた。創成館(長崎)戦の2回2死満塁から中堅に2点適時二塁打を放ち、リードを5点差に広げた。勝利を収め、走攻守3拍子そろう「みちのくのイチロー」が、悲願の東北勢初優勝へ好スタートを切った。

 飛び散る黒土とともに、白球が高々と舞い上がった。3-0で迎えた2回2死満塁、1ボール2ストライクからの4球目だった。創成館の大野が投じた縦のスライダー。ボールは本塁手前でワンバウンドしたが、上林はしっかりと目で追い、すくい上げるように捉えた。「追い込まれていたので、スライダーがくると分かっていた。ボール球だと思ったけど、うまく反応できた」。打球は中堅手の前にポトリと落ちる2点適時二塁打となった。

 憧れの存在の“秘技”だった。ワンバウンド打ちと言えばオリックス時代のイチローが有名だが「テレビで見たことがあります。でも、イチローさんはプロの世界でやったので」。冬場はチームで唯一、長さや重さが違う5種類のバットで1日1000回のティー打撃を繰り返した。練習試合用のユニホームは背番号51。イチローを目指し、巧みなバットコントロールに磨きをかけた成果だった。

 走攻守そろった外野手としてプロから熱視線を浴びる。昨秋公式戦の3本塁打は出場全選手の中でトップ。仙台育英では1年秋から4番で、高校通算13本塁打と勝負強い。ワンバウンド打ちの場面では、中堅の守備位置を確認し、50メートル走6秒0の快足で二塁を陥れた。4回には「左の小さい打者なので飛んでくる」と抜群の読みで、左翼定位置付近への飛球をスライディングキャッチ。「スカウトの方も来てるので、どんどんアピールしたい」と言う。

 埼玉出身だがルーツは東北にある。父光行さん(48)は岩手・宮古市出身で、山田高の球児だった。「僕の世代は東北と育英の2強。あいつがいるチームが、優勝旗を持ってきてほしかった」という父の願いもあり、仙台育英に進んだ。昨秋の明治神宮大会を制し優勝候補として臨む今大会。「少ないチャンスだと思うので、優勝したい」と自らのバットで強力打線を引っ張って悲願の「大旗白河越え」に挑戦する。【今井恵太】

 ◆上林誠知(うえばやし・せいじ)1995年(平7)8月1日、さいたま市生まれ。小1の時、西堀A-Iで野球を始める。中学時代は浦和シニアに所属し、3年春に全国制覇。仙台育英では1年秋から4番。家族は両親、兄、弟。184センチ、77キロ。