<センバツ高校野球:仙台育英7-2創成館>◇25日◇2回戦

 優勝候補の仙台育英(宮城)が創成館(長崎)を下し、春通算10勝目を挙げた。5-2の8回、小林遼捕手(3年)が右翼席中段まで運ぶ特大ソロを放った。秋田から自家用車で駆けつけた家族が見守る中、3回から無得点が続いていた停滞ムードを吹き飛ばす貴重な1発だった。3回戦では、早実(東京)と対戦する。

 甲高い打球音が響いた直後、小林の手からバットが勢いよく舞った。8回無死、1ボール2ストライクからの5球目だった。内角直球をフルスイングで捉えると、打球は右翼席中段まで伸びていった。打った瞬間それと分かる当たり。リードを4点に広げる特大の公式戦2本目の1発に「最高に気持ち良かったです」と満面の笑みを浮かべた。

 どうしても欲しかった1点だった。1回に3点を先制。2回2死満塁では、4番上林誠知主将(3年)がワンバウンドのボールを中前に運び、5-0と楽勝ムードが漂った。だが、3回に2点を返されてから打線が沈黙。相手の右腕エース大野拓麻(3年)のスライダーに手を焼き、4回から7回までは1安打無得点に封じられた。主砲の上林が厳しいマークを受けて1安打に抑えられる中、小林は5打数3安打2打点。佐々木順一朗監督(53)も「あの1発が大きかった。6番は塁が埋まった時に回る」と大きく期待している。

 またしても、“魔法の言葉”が効いた。左飛に倒れた第3打席の後、佐々木監督から体が伸び上がる悪癖を指摘された。「そうなると打球は左にしか飛ばない。修正してバットが(スムーズに)出た」。公式戦1号を放った昨秋の明治神宮大会準決勝でも、試合前に小林だけが助言をもらい直接指導を受けていた。佐々木監督は「日本海の荒波みたいな感じ。おとこ気で打ってる」と独特の言い回しで、秋田出身の小林の活躍をたたえた。

 遠路駆けつけてくれた家族に届ける1発だった。母優子さんらは、前日24日の昼に秋田を出発。自家用車で約13時間かけて甲子園までやってきた。運転手を務めた祖父友枝さんは、体重増に励む孫のため、正月に帰省した際に焼き肉を振る舞った。そのかいもあり、小林は昨秋の72キロから76キロへ。家族の助けもあってつけたパワーで大アーチをかけ、恩返しした。

 打線は11安打を放ち、昨秋からの調子をキープ。初めて準優勝した01年以来の勝利で、春通算10勝となった。当時の初戦の相手は、この日の創成館と同じ長崎県勢の海星だった。佐々木監督は「ホッとした」と話すが、当時も延長10回4-3の辛勝だった。長崎県勢撃破は、悲願の「大旗白河越え」への序章-。強力打線を武器に、頂点への階段を1歩ずつ上がっていく。【今井恵太】