松井は黒星で強くなる。桐光学園(神奈川)・松井裕樹投手(3年)が23日、川崎市内の同校グラウンドで関東第一(東東京)との練習試合に先発登板。9回を投げて7安打4失点の6奪三振で、今季の公式戦、練習試合を通じて初の敗戦投手となった。ただ、神奈川大会(7月7日開幕)に向けた強化合宿の真っ最中。疲労がある中、連戦を意識した打たせて取る投球を実践して野呂雅之監督(52)らを納得させた。

 試合後、ベンチに腰掛けスコアブックを見る松井にいつもの笑顔はなかった。真剣なまなざしで自らの投球内容を振り返った。9回7安打4失点で4四球6奪三振。制球が定まらず、代名詞の三振も2ケタに届かなかった。練習試合、公式戦通じて今季初となる黒星をじっくりとかみしめた。

 ただ、手応えのある負けだった。初回、暴投などで2死三塁としてフルカウントからの7球目。田中幸城捕手(1年)のサインに3度首を横に振った。関東第一の4番山口啓太外野手(3年)に投げたのは得意のスライダーではなく、今春から多投するチェンジアップだった。右打者の外に逃げていくボールで空振り三振に仕留めた。

 今は万全の状態ではない。6月の第2週から行われている強化合宿で疲労はピークだ。木曜日から月曜日まで学校に泊まり込む。夜は10時近くまで練習し、投手陣はウエートトレーニングや走り込みの量を増やしている。同じように疲れがたまる本番を想定して、打たせて取る投球を心がけた。全27アウト中、三振で奪ったのは6つ。最速146キロと球威はあったが、変化球でバットの芯を外して9つのゴロアウトを奪った。

 神奈川大会の準決勝、決勝では好投手との連戦が予想される。野呂監督は「今日を公式戦と考えたら、得るモノは大きい。緊迫した連戦では精神的な体力が必要。大事な場面ですばらしい球を投げられるか」と話す。この日の投げ合いに敗れた経験が、夏を勝ち抜く原動力になる。【島根純】