<秋季高校野球岩手大会:専大北上6-0宮古工>◇14日◇1回戦◇花巻

 専大北上が宮古工を下し、初戦を突破した。ポーランド出身の父を持つ190センチ右腕、ミヒニャック晏冶英(あんじえい、1年)が相手打線を5安打に抑え込み、公式戦初完封勝利を挙げた。

 グラウンドでひときわ目を引く大きな体には、優しい心が宿っていた。身長190センチの専大北上・ミヒニャック。長い腕を上から振り下ろし、154センチと小柄な杉山滉生捕手(2年)が構えるミットにボールを投げ込む。「気持ち的に大きな先輩。どんな球も止めてくれるし、ピンチで声をかけてくれる。思い切り腕を振れた」。公式戦初完投を完封で飾っても浮かれず、チーム事情で今秋から捕手に転向した先輩に感謝の弁を述べた。

 志願の完投だった。白浜暁監督(30)は継投も考えていたが「本人から『行かせてください』と言ってきた。一番強気で行ける子」。定期試験明けで万全ではなかったミヒニャックだが、1回から全力で108球を投げきった。決め球のフォークを1球しか使わず5三振。杉山も「いつも以上にアウトローに真っすぐがきていた」と、角度のある直球を受け止めた。

 その恵まれた体には、両親の愛情が詰まっている。実家は福島・須賀川市ですし店「まぐろ亭」を経営しており「良いものを食べさせてもらっているんで。サーモンが好き」。成長期に高タンパクの海の幸をたらふく食べたおかげで?

 すくすく育った。高校入学から5センチ伸びた身長は今なお成長中。球速も7キロ上がって135キロをマークする。

 父アンドレイさんはサッカーが盛んな欧州のポーランド出身だが、ミヒニャックは野球一筋だ。「小3から野球漬け」で、父の生まれ故郷に行ったこともない。現在は寮生活。家族と顔を合わせる機会も少ないだけに「お父さんは野球を全然知らないけど、自分が頑張っている姿を見てもらいたい」。全力で野球に打ち込むことが、育ててくれた親への最大の恩返しになる。【今井恵太】

 ◆ミヒニャック晏冶英(あんじえい)1997年(平9)6月30日、埼玉県生まれ。小3年の時、硬式の須賀川シニアで野球を始める。同シニアで指導する元プロ野球選手の福本万一郎氏に、投手としての才能を見いだされた。190センチ、83キロ。右投げ右打ち。家族は両親、弟2人、妹、祖父母。血液型B。