<高校野球秋季北海道大会:駒大苫小牧7-0鵡川>◇15日◇室蘭地区Aブロック◇代表決定戦◇苫小牧市営緑ケ丘

 “ドクター・ゼロ”の登場だ。室蘭地区の代表決定戦で、昨秋の全道大会覇者、駒大苫小牧が鵡川をコールドで下し、3年連続の出場を決めた。今秋、エースナンバーを背負う岡崎遼太朗(2年)が、7回参考ながら無安打無得点を達成。許した走者は、四球による2人だけ。初戦から全3試合に先発し、19回連続無失点、さらに16回連続の無安打を継続したまま、全道の舞台に乗り込む。

 駒大苫小牧のエース岡崎は、本番前の投球練習が終わると、必ず頭の中で思い浮かべる歌がある。「シャララララ~僕の心に~♪

 いつまでも輝く夢~♪

 ドラえもん、そのポケットで~かなえさせてね~♪」。決して焦らず、ちょうどいい。「自分の投球テンポや守備のリズムに合っているんです」。投げ急ぐ悪癖を修正してくれる魔法の歌。国民的アニメ「ドラえもん」の主題歌が、最高の投球リズムを思い出させてくれた。

 立ち上がりの1回こそ、2人目の打者にストレートの四球を与えるなど制球を乱したが、すぐさまけん制で一走を刺し、波に乗った。球速130キロ台前半でも、183センチの長身から投げ込む角度ある直球は、打者の手元でぐんと伸びた。「真っすぐが決まっていて、変化球も腕が振れていた」という、ほぼ完璧な投球。「守備に安定感があるので、安心して気持ち良く投げられました」と打たせて取ることを念頭に投げたが、最後の6、7回だけは、得意のフォークボールを決め球に6アウト中、5つを三振で奪った。

 代役とは、言わせない。今春のセンバツ初戦で完封勝利を挙げ、今夏、背番号1を付けた同学年の伊藤大海(2年)が故障で出遅れたため、巡ってきたエースナンバー。1年生ながら将来性抜群の桑田大輔投手も、今秋は体調不良でベンチを外れ、チームの下馬評は決して高くはなかった。そんな中、全3試合で先発した岡崎が、計19回を3安打無失点。マウンドを譲ったのは3回戦の1イニングだけで、ほぼ1人で投げ抜いた。「エースはあくまで伊藤大海」と言っていた佐々木孝介監督(27)だったが「(岡崎が)ここまで投げるとは思わなかった」と、うれしい誤算に目を丸くした。

 以前は「野手とのリズムが合わなくて、崩れることが多かった」(佐々木監督)というが、今大会の初戦を終えた後、魔法の歌を発見してからは、2試合連続で安打を許していない。全道大会には伊藤や桑田も復帰の見込みだが、岡崎は「(背番号1に)こだわりたい」。投手陣の競争激化が、昨秋の全道覇者を、より強くする。【中島宙恵】

 ◆岡崎遼太朗(おかざき・りょうたろう)1997年(平9)9月10日、帯広市生まれ。本別中央小2年で野球を始める。同小6年時に陸上のソフトボール投げで78メートルを投げて全道2位。駒大苫小牧では、1年秋の全道大会で背番号11で初めてベンチ入りした。持ち球はカーブ、スライダー、フォークボール。183センチ、79キロ。右投げ右打ち。