<高校野球鹿児島大会>◇21日◇決勝

 樟南が4年ぶり17度目の甲子園切符を手にした。初出場を狙う鹿児島城西との決勝で、1点リードされた5回裏、今夏初スタメンの6番茂木(しげき)龍幸(3年)が逆転ランニング3ランを放ち、3-2で逃げ切った。

 無我夢中で「背番号16」が走った。5回裏2死二、三塁。6番茂木が低めの直球を思い切り振り抜いた。鋭い打球が中前を襲う。中堅手が飛び込んだ。抜けた。「三塁までいける」。二塁を蹴った。三塁コーチがグルグル手を回す。「何も考えられなかったし、覚えていないです」。気がつくと、捕手のタッチをかいくぐり、本塁へ滑り込んでいた。逆転ランニング3ラン。高校通算2本目は、夢切符をつかむ劇的なアーチとなった。

 試合前のベンチ裏で今夏初スタメンを告げられた。前日20日の準決勝・鹿児島南戦は9回に代打本塁打。夏の戦い方を知り抜く65歳の名将・枦山智博監督が、大舞台で抜てきした。球場中に聞こえるマイクを通して、枦山監督から「ありがとう」といわれると「いつも怒られてばかりなので、びっくりしたし、うれしかったです」と照れながら丸刈りの頭をかいた。

 現在のチームは秋、春ともに県8強止まり。枦山監督には「甲子園に行けるチームじゃない」と言われた。「勝てなくて苦しかった。夏に勝とう、とみんなに言い続けた」という二塁手の森藤純弥主将(3年)を中心に鉄壁の守備で1点差を守りきった。

 枦山監督は「選手には『甲子園に行けるチームじゃない』と言ったけど、狙っていたし、行かせてやりたかった」と打ち明けた。序盤にスクイズと犠打を失敗。「私の責任」と同監督。5回には4番定岡俊毅にエンドランのサインを出し成功。茂木の3ランにつながった。65歳監督の執念に、気合で応えた樟南ナイン。4年ぶりの夢舞台でも大暴れする。【倉成孝史】