ヤンキースが大きな話題を集めている。主力の多くを放出し、アレックス・ロドリゲスやマーク・テシェイラといったチームを支えたベテランたちが相次いで引退を決めてチーム構想から外れたりと、急激に若返りを進めている。常勝を義務付けられている名門球団にとって、シーズンなかばでの終戦を示すような大胆な若返りはかつてなく、驚いた人は多かった。

 ところが、この若返りによってメジャーに昇格してきた若手が活躍し、チームはむしろ良い状態になっている。注目株のランク付けで定評のあるベースボール・アメリカ誌で、15年に全球団の36位にランクされたゲーリー・サンチェス捕手(23)は、メジャーデビューから最初の22試合で10本塁打、30安打を記録したメジャー史上初の選手となった。今や打線の要になっているだけでなく、田中将大投手とのバッテリーで好リードを見せるなど、攻守に渡って活躍している。大型長期契約中のベテランをいまだ抱えた状態というマイナス面はあるものの、大胆な若返りは今のところ成功しているといっていい。

 ヤンキースという球団にとって、かつてならあり得なかった若返りという大ナタは、実はSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)がきっかけだったという。今年のキャンプ時期、ハル・スタインブレナー・オーナーがツイッターでファンの反応などをチェックすると、期待の若手一塁手グレッグ・バードのメジャー昇格を強く望む声を数多く見た。さらに球団の有力スポンサーらからもバードを望む声が上がった。そのとき同オーナーは、ヤンキース周辺やファンの間で若手を抜てきしようという土壌ができてきたと感じたそうだ。バードは肩を故障したため今季1年間を棒に振ってしまったが、オーナーはバードの代わりにサンチェスら若手への切り替えを決断するに至った。これまであり得なかったことをSNSが変えたというのは、まさに時代である。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)