熱心な野球ファンならずとも、「大谷故障」の一報は、ショッキングだったのではないでしょうか。

 日本だけでなく、メジャー1年目から「二刀流」で米国球界で注目を集めてきたエンゼルス大谷翔平投手が、残念ながら戦列から離れました。6日(日本時間7日)のロイヤルズ戦に先発した後、右肘に異常を訴えた結果、側副靱帯(じんたい)の部分損傷と診断され、8日(同9日)、故障者リスト(DL)入りすることになりました。同じ野球とはいえ、いろいろな条件、環境が異なるメジャー1年目。異変への前兆は、いつ、どこにあったのでしょうか?

 降板直後は、右手のマメによるものと思われていましたが、本当に懸念すべき箇所は「肘」でした。

 日本と比べて、メジャーのボールは、滑りやすく、その分、肩や肘への負担がかかりやすいという見方があります。もっとも、科学的に実証されているわけでもなく、大谷の故障の原因を特定することはできません。ただ、日本以上に米国では「トミー・ジョン」と呼ばれる肘の腱(けん)移植手術を受ける選手が多いのは事実です。

 メジャーでは、主に中4日の登板間隔で登板するため、100球前後の球数制限を設定していますが、それでも故障者は、後を絶ちません。大谷の場合、打者での出場を挟むこともあり、中6日以上の間隔を空けてきましたが、それでも肘は悲鳴をあげました。

 その一方で、メジャーでは、投手だけでなく、野手でも肘を壊す選手が少なくありません。過去には、マット・ウィタース捕手(当時オリオールズ)が「トミー・ジョン」手術を受けたほか、昨オフにはコーリー・シーガー遊撃手(ドジャース)が、同手術を受け、今シーズン中の復帰が絶望視されています。となると、登板間隔や球数制限など、投手の枠組だけで故障の原因を探ることも容易ではありません。

 確かに、時速160キロ前後の剛速球は魅力ですが、体への負担が大きいことは間違いないでしょう。だからといって、持っている力を加減して投げるような戦いも見たくありません。

 近い将来、肘や肩の故障の原因を科学的に究明し、予防できるようなプログラムを確立できるようになる日は来るのでしょうか。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)