ワールドシリーズ第7戦でロイヤルズを3対2で下し、今シーズンのMLB王者となったジャイアンツ。2010年以来5年間で3回目の戴冠であり、2010年代を代表する強豪チームとなったといっていいかもしれない。

 こうしたチームに対しアメリカではしばしばダイナスティー、王朝という言葉が使われる。まさに時代に君臨するチームといったイメージだ。実際、MLB以外でも2000年代はじめに3連覇したNBAのロサンゼルス・レイカーズや、やはり3回優勝したNFLのニューイングランド・ペイトリオッツなどがダイナスティーが使われていたことがある。

 が、今回のジャイアンツに関してはダイナスティーと呼ぶことに違和感を感じる人が多いようだ。それは果たしてMLBに君臨しているというほど強いチームなのか、ということにある。

 確かに5年間でワールドシリーズ3回制覇はなかなかできることではない。が、シーズンを通じて他を圧倒してきたかというとそう言い切れない、というのだ。

 まずレギュラーシーズンの成績だが、2010年と2012年の優勝時は地区優勝を果たしている。しかし、今シーズンは88勝74敗でナ・リーグ西地区2位、首位ドジャースには6ゲームをつけられながら、ワイルドカードからはい上がってのシリーズ制覇だった。ロイヤルズもワイルドカードからの進出であり、ワイルドカード同士のワールドシリーズという点も注目されていたのである。

 さらにひっかかりになっているのが、ワールドシリーズ制覇に挟まれた2011年と2013年の成績である。2011年は86勝76敗で、ダイヤモンドバックスに8ゲームをつけられての2位。昨年、2013年は76勝86敗と負け越し、3位に終わり、いずれもプレーオフを逃しているのだ。

 この内容ではとてもダイナスティーと呼べるものではない、というのが異論者たちの言い分である。

 ただ現在のMLBではFA制度の浸透などにより、選手の流動性が過去よりもはるかに高くなっており、高いチーム力を数年にわたり維持することが難しくなっているのも事実だ。その点において5年間で3回制覇できるチームを作ってきた首脳陣には、ダイナスティーと呼ばれないにしても、ひときわ大きな称賛が贈られるべきだろう。