プレーバック日刊スポーツ! 過去の10月16日付紙面を振り返ります。2006年の7面(東京版)は“猛虎”へ変身したメジャーリーグのタイガースが22年ぶりにワールドシリーズへ駒を進めました。

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<ア・リーグ優勝決定シリーズ:タイガース4-3アスレチックス>◇第4戦◇2006年10月14日(日本時間15日)◇コメリカパーク

 【デトロイト(米ミシガン州)14日(日本時間15日)】タイガースがアスレチックスに4連勝で、ア・リーグ優勝決定シリーズを制した。同点の9回裏。4番マグリオ・オルドネス右翼手(32)が、この日2発目となるサヨナラ3ランを左翼席へ運んだ。昨年まで12年連続で勝率5割以下、03年には119敗した“ダメ虎”が、97年にマーリンズを世界一へ導いた名将リーランド監督のもと猛虎へ変身を遂げた。前回世界一となった84年以来、22年ぶりにワールドシリーズへ駒を進めた。

 長らく味わっていなかったリーグ優勝は劇的に決まった。3-3の9回裏2死一、二塁。6回に同点弾を放っていたオルドネスが、ア軍守護神ストリートの93マイル(約150キロ)真ん中直球を左翼席へ運んだ。「これがいつも夢見ていたことだったんだ。ベースを回ったことも覚えてないよ!」。ベンチから、左翼後方のブルペンから次々に選手が飛び出して、オルドネスを中心に本塁付近で大きな輪ができた。

 今季から指揮を執るリーランド監督は振り返った。「春季キャンプの時、ウチには良い選手がいた。でも良いチームではなかった。今日、言おう。ウチは本当に良いチームになった。それを一番誇りに思う」。この日は序盤の3失点をものともしなかった。02年に106敗、03年には119敗、過去2年も90敗以上していたダメ虎の姿はそこにはなかった。

 捕手ロドリゲスが、左翼のモンローが、勝利の要因を「グレートな監督のおかげ」と話した。ドンブロウスキGMは「彼がリーダーシップを発揮して、このチームに勝つ方法を持ち込んだんだ」と言う。100マイル(約161キロ)を投げる投手陣など、もともと素材はそろっていた。同監督はそこに、投手を中心に守り、攻撃ではきっちり走者を進める基本重視の野球を植え付けた。

 くしくもリーランド監督は7月下旬のある日、プレーオフ進出球団を予言するかのように、こう話した。「現在“野球選手”と契約している球団はうちとツインズとアスレチックスだね。あとの球団は“アスリート”と契約してる感じ」。そしてコッツェー、ケンドール(ともにア軍)と並んで、考えてプレーができる“野球選手”の代表格として挙げたのが、この日、打率5割2分9厘と好守でシリーズMVPに輝いたポランコだった。

 タ軍の最強投手陣は“アスリート軍団”ヤンキースを寄せ付けなかった。そして同タイプの難敵ア軍も一蹴してア・リーグ王座を勝ち取った。この日の試合後、場外で配られていた地元紙の号外の見出しには「ネクスト!(さあ次!)」と書かれていた。チームを祝福する車のホーンはいっこうに鳴りやまなかった。84年以来、5度目の世界一へ向け、デトロイトの盛り上がりは最高潮だ。

※記録と表記は当時のもの