【アトランタ(米ジョージア州)13日(日本時間14日)=佐藤直子通信員】ブレーブス川上憲伸投手(33=中日FA)が誕生した。3年2300万ドル(約20億7000万円)で正式契約を結び、本拠地ターナー・フィールドで記者会見。明大、中日時代と同じ背番号「11」の新ユニホームに袖を通し、直筆で「魂」としたためた色紙を掲げて意気込みを語った。会見には名将ボビー・コックス監督(67)も同席し、日米合わせて100人以上の報道陣が集結。代名詞である「魂」の投球スタイルで、サムライ憲伸がメジャーに乗り込む。なお15日、帰国する。

 骨太の「魂」に決意を込めた。川上は「私のピッチングは、魂を込めて1球1球投げること。このアメリカの地でも実践したいです」と、筆で力強くしたためた書を日米報道陣の前に掲げた。

 「御大」こと故島岡吉郎元監督の熱血精神が流れる明大野球で鍛えられ、中日では「闘将」星野元監督に学んだ。気迫の投球が体に染みついており「アメリカでも日本でも逃げたら負け。逃げない気持ちで頑張りたい」と真っ向勝負を意気込んだ。そんな闘志あふれる姿に目を細めたのがコックス監督。143退場と歴代記録の更新を続けるメジャー最強?

 の闘将は、「映像を見たが、投げ方がスムーズで制球が素晴らしい。2ケタは勝てる。川上が来てくれてうれしい」と活躍に太鼓判を押した。

 代理人エバンス氏は「ブ軍は金銭的には最高額ではなかった」と明かす。12球団を超すオファーの中からブ軍を選んだのは、その熱意。FA宣言初日からラブコールを送り、レンGMとシュワルツ球団社長はアトランタ日本領事館を訪ね、日本食レストランの情報をもらうなど、生活環境でのバックアップ態勢を惜しまなかった。訪問者を温かくもてなす「Southern

 Hospitality」の南部人精神が、魂の男の心を引き付けた。

 あこがれのマダックス(元ドジャース)が全盛時代を築いた球団であることも、決して偶然ではない。「精密機械」の針の穴を通す芸術的な投球は、「コントロールがいいと、あれほど楽な投げ方でいい投球ができるんだ」と、制球に悩む投手転向間もない高校2年生に衝撃を与えた。

 先発陣の整備が急務だったブ軍は、バスケス(前ホワイトソックス)をトレードで獲得し、川上の争奪戦でも勝利。そして待望の先発1番手でもこの日、右腕デレク・ロー(35=ドジャースFA)と4年6000ドル(約54億円)で契約合意にこぎつけた。先発5枚のうち4人が確定。昨季世界一フィリーズも所属する激戦の東地区だが、先発だけなら十分に対抗できる陣容を整えた。

 会見で川上は英語で自己紹介。南部流に「Y’all(You

 allの略)

 can

 call

 me

 Kenshin(ケンシンと呼んでください)」と語りかけ、地元メディアを喜ばせた。アトランタ市民が英雄とたたえるのは、60年代に「魂」をささげてアフリカ系アメリカ人の公民権運動に尽力したキング牧師。川上が誓う「魂」の投球は、必ずや地元ファンの心を打つはずだ。