<レンジャーズ4-2マリナーズ>◇2日(日本時間3日)◇レンジャーズボールパーク

 【アーリントン(米テキサス州)=佐藤直子通信員】マリナーズ・イチロー外野手(35)が、今季50度目のマルチ安打をマーク、現役通算打率(3000打数以上)で昨年5月12日以来のトップを奪回した。通算打率は3割3分2厘9毛9糸で、前日まで1位だったカージナルスのプホルス一塁手を6糸かわした。試合は敗れたが、イチローは9年連続200安打まであと45本とした。

 イチローなら最もこだわりたい「タイトル」かもしれない。この日、2試合連続の複数安打で、目の上のタンコブだった「同期」をわずか6糸抜いた。4回先頭でフルカウントからの外角速球に逆らわずに三遊間へ転がし、昨季ゴールデングラブ賞に輝いた三塁ヤングの送球に足で勝った。名手も「内野に弱い打球を転がされると、刺すのはかなり厳しい」と脱帽だった。

 6回には無死一、二塁から右前打で満塁と好機を広げ、この回2点を奪って1度は逆転劇につなげた。イチローは今季、通算打率2位(3割3分1厘)の3厘差でスタートした。プホルスも一時、首位打者を争う活躍でその差は縮まらなかったが、この11試合で8回のマルチ安打を記録。前日には2毛差まで接近し、ついに昨年5月12日以来となる「指定席」を奪い返した。プホルスもイチローと同じ01年にデビュー、こちらは新人年から8年連続の打率3割、30本塁打、100打点を続ける。存在を強く意識するとともに、才能を認め合う間柄だ。

 もっともこの日、イチローが感心したのは、11度のゴールドグラブ賞に輝くベテラン内野手の頭脳プレーだった。先頭で出塁した4回、1死後にロペスが打球を打ち上げると、二塁ビスケルが帰塁するイチローを確認し、意図的に落球し二塁で封殺した。「昔ショートで1度だけやった」というビスケルは、「足の速いイチローを刺しておきたかった」とニヤリだった。イチローは「(あのプレーができるのは)あの人だけでしょう。(ほかにビスケルのような選手は)いないですね」と称賛を惜しまなかった。