西武中島裕之内野手(28)が今オフ、ポスティング(入札)制度を利用してのメジャー移籍を目指すことが10日、分かった。順当なら海外移籍が可能となるFA権取得は2年後のため、今後球団に意向を伝える。小林球団社長は「本人の意思や夢には最大限配慮したい」と容認へ前向きな姿勢を示しており、実現すれば西武では松坂大輔投手(レッドソックス)以来。今後の交渉の行方が注目される。チームはこの日、クライマックスシリーズ(CS)ファーストステージでロッテに連敗して敗退した。

 中島が夢の実現に向かって動きだす。08年の契約更改後の会見では「メジャーにいけるような選手になりたい」と口にしていたが、その時がきた。今季は選手会長に就任し、チームに配慮して関連の発言は封印。この日、CSでロッテに敗れた試合後も「どうなるか分かりません」と話すにとどめた。だが西武でプロ10年を終えた今年を1つの区切りとして、球団にメジャー挑戦の意向を伝える決意を固めた。

 順当なら、海外移籍が可能なFA権取得は2年後になる。今オフにメジャー移籍するには、球団の許可を得た上でポスティング制度を利用するしか方法がない。この日、小林球団社長は「そういう話はないです。球団としては戦力ダウンなので、出したくないのが本音です」と話した。チーム顔でもある看板選手だけに、引き留めが既定路線とした。

 一方で「本人の意思や夢には最大限配慮したい」とも語り、容認をにおわせる発言もあった。過去には、松坂(レッドソックス)のポスティング移籍を認めた“実績”もある。04年から遊撃のレギュラーを獲得した中島は、日本球界を代表する内野手に成長。実力だけでなく、女性ファンから支持を集め、人気面でも新たな集客層も開拓した。チームへの貢献度は高く、受け入れ準備があることも示唆した。

 中島は我慢強い起用で育ててもらった球団には恩義を感じている。ポスティングによる移籍金で、恩返ししたい思いがある。ただ取り巻く現状は厳しい。世界的な不況の影響で、以前のような高額入札は望めない。松坂の時は約60億円といわれる移籍金が西武に入ったが、米球界関係者は「興味を示す球団はいくつかあります。ただ日本人内野手はメジャーで苦戦しており、現実的には二塁手。入札額は高くはならないでしょう」とみる。ポスティングが利益になるか未知数な部分もあり、西武球団は慎重に協議して総合的に判断する模様だ。

 中島のメジャー志向は年々強まっていた。09年のWBCでは、勝負強い打撃で日本の連覇に貢献。主力ではチーム最高打率の3割6分4厘をマークし、国際大会で自信を深めた。チームでは今季まで5年連続打率3割、3年連続20本塁打など安定した成績をマーク。遊撃手の後継者として、2年目の浅村などが成長している。松井稼頭央がメジャー挑戦した穴を中島が埋めたように、世代交代にも問題はなさそうだ。

 国内ラストゲームになるかもしれないこの日は3安打を放ちながら、最後の打者になった。「明日も試合がしたかった」と唇をかんだが、シーズンはすべて終了。メジャー移籍実現へ、乗り越える障害は少なくないが、10月中にも球団と交渉のテーブルにつき、熱意を伝えるつもりだ。