【フォートマイヤーズ(米フロリダ州)6日(日本時間7日)=四竈衛】昨年6月に右肘手術を受けたレッドソックス松坂大輔投手(31)が、早ければ5月中にもメジャーに復帰する可能性が出てきた。同地での自主トレ再開2日目のこの日、前日に続くキャッチボールを行った後、写真でフォームをチェック。術前よりも肘が高く上がっていることに大きな手応えをつかんだ。順調に回復していることもあり、今月20日前後にもブルペン投球を再開する見込みとなった。手術直後は7月の球宴後とみられていたが、早期復帰が現実味を帯びてきた。

 付き添っていたトレーナーから「あと5球」と指示された26球目から、松坂はギアを上げた。ラストの30球目。メスを入れた右肘を怖がることなく強く腕を振った球は、糸を引くような高スピンの球筋で捕手のミットに収まった。「やっと全体的な流れを意識して投げられるようになってきました。フォームを大きく使って、うまく力を抜いて投げられるようになってきました」。自主トレ再開2日目にして、あまりの感触の良さに、次々と前向きな言葉が口を突いて出た。

 球速は、推定85マイル(約137キロ)。野球経験があり、捕手役を務めたジェフリー・カトラー通訳が「最後の数球はすごい球でした」と驚くほど。わずか半年前に大手術を受けた投手の球とは思えない球だった。

 実際、松坂自身も手術前との違いを実感した。投球後は、本紙カメラマン撮影の写真で投球フォームをチェック。「自分が思っているより肘が高く上がっている感じがしますね。去年までの投げ方がひどかったですから(笑い)。自分が力を入れている具合よりも強く見えます。重心が下がっているし、軽く投げても、球に力が伝わっているように感じます」。写真を見終わった松坂は「いいものを見せてもらいました」と笑顔で話した。

 ここ数年、試行錯誤を繰り返してきたのが、肘の高さやリリースポイント。リハビリ期間中は、体幹、股関節をはじめ、徹底的に下半身をいじめ抜いた。食事面では炭水化物の摂取量を控え、新年も「おもちは少しだけ」と言うほど体調を管理。その結果、肘の回復と比例して体全体のバランスが良くなり、ほぼ理想的なフォームとなって修正された。

 次のステップとなるブルペンでの投球練習は、慎重を期した上で20日前後に設定した。投球翌日の患部の感覚も、現時点では異常なし。投球前には温め、投球後にはアイシングと入念なケアは欠かさない。「思ったより張ったりすることはなかったですし、安心しました。肘に対する反応は悪くないです」。今後は、さらに距離、球数を伸ばし、強度を上げていく段階へと移行。順調ならキャンプ序盤にもフリー打撃、3月下旬にはマイナーでの実戦登板も見えてきた。

 もちろん、焦るつもりも、急激にペースアップするつもりもない。だが、今季中にダルビッシュ、和田、岩隈らWBCの同僚と投げ合うためにも、スケールアップして復帰したい気持ちは強い。「いい状態、兆候になってきました。100%スッキリすることはないですが、今はこんなもんでしょう」。練習後の柔らかな表情が、松坂の手応えを物語っていた。

 ◆松坂手術後の経過

 ◇手術

 11年6月10日、ロサンゼルスの病院で右肘靱帯再建術。靱帯が完全に断裂していた。

 ◇リハビリ

 6月23日、フロリダに移動し、リハビリ生活。20日の検診で右肘ギプスが外れ、肉体改造トレーニングにも着手。

 ◇初投げ

 10月3日、4カ月ぶりのキャッチボールを再開。距離は15メートル。

 ◇本拠地へ

 11月18日にフロリダからボストンへ。

 ◇一時帰国

 12月13日に日本へ帰国し12年1月2日に渡米。キャッチボールの距離が50メートルに。

 ◆側副靱帯再建術(通称トミー・ジョン手術)

 他の箇所から腱(けん)を採取し、新しい靱帯を再建する手術のため、一般的には術後4~6カ月から軽いテニスボールなどでスローイングを再開。実戦まで丸1年は必要。最近ではレ軍で同僚の田沢が術後1年と20日でマイナー戦に復帰。ストラスバーグ(ナショナルズ)は最後の登板から1年と16日でメジャー復帰を果たしたが、1年を切るケースはまれ。松坂が5月中にメジャー復帰となれば、驚異的な回復だ。