5年在籍したヤンキースをFAとなり新天地を探す井川慶投手(32)が20日、米球界残留を最優先する意向を明かした。茨城・ひたちなか市で自主トレを公開し、去就について「オファーゼロです」と長期化を覚悟。オリックスなどが興味を示す国内復帰は「5年間で成長した姿を見せてない。その状況で戻るのは難しい」としばらく凍結し、「アメリカでやるために練習している。メジャーでもう1度投げたい」と話した。

 ただメジャー契約が絶望的な現状も理解する。ヤ軍最後の登板は08年6月7日。昨年は大リーグのキャンプにも呼ばれなかった。希望球団は「いずれ上で投げられる機会があれば。先発で、というのもない」と多くは求めない。「オープン戦でゼロに抑えても開幕メジャーはない。でもキャンプで上の首脳陣に見てもらうことがいいアピール。そこは重要です」。招待選手で構わないとし、「マイナーで開幕しても4、5月にケガ人が出たときが一番のチャンス」と再昇格の青写真を描いた。

 幸いにもこの時期から、招待選手を前提としたマイナー契約の打診は増える。井川も「2月くらいでは」と焦る様子はない。昨年末に帰国後は「それしか持ってないので」とメジャー球での練習を続ける。「日本で先発投手の確約があったら?」と振られても、「チャンスがある限りは粘りたい。本当にないなら(国内復帰を)考えます」と揺るがなかった。

 入札制度で海を渡るダルビッシュ有投手(25)には「テキサスには日本にない暑さがある。ドームも少ないし、そこをどう乗り越えるか」とアドバイス。入札金と契約金合わせて史上3位の約52億円が動いた自身の5年前を思い出したのか、「もっと皆さんが注目するところで投げたい」と4年ぶりのメジャーしか見えなかった。【中島正好】

 ◆井川のヤンキース在籍5年

 06年オフに入札金2600万194ドル、5年2000万ドルの契約でヤ軍入り。1年目こそ開幕ローテーション入りも5月早々にマイナー降格。6月に再昇格もこの年は2勝3敗に終わり、2年目は2試合に登板しただけ。メジャーでは計16試合(先発13)に登板し2勝4敗、防御率6・66で退団。昨季は2Aと3Aの降格と昇格を計6度も命じられる屈辱だった。