<マリナーズ1-0ドジャース>◇8日(日本時間9日)◇セーフコフィールド

 マリナーズのイチロー外野手(38)が、メジャー12年目で初めて自軍のノーヒットノーラン達成を見届けた。ドジャース戦で先発ミルウッドが右足付け根を痛めて6回1四球で降板したが、継投した5投手が無安打無失点を継続し、メジャー史上最多タイの6投手による快挙を演じた。イチローは約1カ月ぶりの3安打を放ち、7回には2死走者なしから出塁し、二盗を決めるなどして生還。メジャー史上8度目の複数投手による達成を後押しした。

 イチローが快挙へと導く虎の子の1点を足で演出した。7回2死走者なしから、俊足を飛ばして二塁への内野安打で出塁すると、次打者アクリーの4球目に二盗を決めた。けん制の直後だったが、捕手エリスが送球をあきらめる完璧なスタートで今季失敗なしの9盗塁目。「拮抗(きっこう)した展開で得点圏に進むのは時にリスクを伴うが、イチローがやってくれた」。ウェッジ監督は3番シーガーの左前適時打で生還して均衡を破った、イチローの働きに声を弾ませた。

 両リーグ最高勝率のドジャースを本拠地に迎え、試合は息詰まる展開で進んだ。わずか1四球の先発ミルウッドが負傷降板。残り3回を5投手でつないだ。9回2死走者なし。電光掲示板に「H」の表示はなく、イチローも重苦しさを感じていた。打席にリーグ打点王のイーシアを迎えて、「あの状況では勝つことを優先しないといけないので」と深めに守った。

 イチロー

 1点差のゲームですから、シングル(単打)をダブル(二塁打)にするわけにはいかない。(際どい打球を捕りに)いかないと厄介なことになる。実際にそういう打球が来たら、そこは葛藤があるでしょう。

 自軍による無安打無得点達成はオリックス時代の17年前までさかのぼるとあって「珍しいケースですよね」。継投による無安打無得点はメジャーで9年ぶりの出来事。「最初から最後まで先発が行ってもらったほうが緊張感もある。まぁ見たいよね、守っている側からしたら。それは残念ですよね」。招待選手からローテーション入りしたミルウッドに達成してほしかったとの思いはあったようだ。

 地元シアトルでは、4月21日のホワイトソックス戦でハンバーに完全試合の屈辱を味わった。4月30日レイズ戦以来の3安打を放ち、決勝点につながる盗塁を決めて鬱憤(うっぷん)を晴らしたかにも見えたが、自らのパフォーマンスについては「僕からは何もないです」と多くを語らなかった。【木崎英夫通信員】

 ◆イチローとノーヒットノーラン

 オリックス時代の95年8月26日に佐藤義則が達成した近鉄戦で1番を打ち2安打2打点。96年6月11日西武戦では渡辺久信に喫し、4打数無安打。大リーグでは今年4月21日、ハンバー(Wソックス)に完全試合を許し、遊直、三振、一ゴだった。

 ◆日本では

 継投によるノーヒットノーランは3度ある。41年6月22日に黒鷲の中河-石原(2人)が名古屋戦、同8月2日に阪急の江田-森(2人)が名古屋戦、06年4月15日に日本ハムの八木-武田久-マイケル(3人)がソフトバンク戦(延長12回)で達成。