ヤンキースは20日(日本時間21日)、FAとなっていた黒田博樹投手(37)と再契約したと発表した。スポーツ専門局ESPN電子版によると、1年契約で年俸1500万ドル(約12億円)と約100万ドル(約8000万円)の出来高払いがつく。獲得に興味を示していた古巣ドジャースやエンゼルス、レッドソックスなどが複数年契約など高額オファーを提示したとみられるが、残留の決め手は「おとこ気」だった。

 黒田が再び、ニューヨークで戦う覚悟を決めた。メジャーでも屈指の先発投手として評価され、今オフFA市場の目玉となった右腕は「ヤンキースと再契約できて、とてもうれしい。自分を評価して、オファーをくれた球団にも感謝している。決断は難しかったが、今年戦った仲間と世界一に挑戦したい思いが強かった」とコメントを発表した。

 水面下で激しい獲得競争が繰り広げられた。キャッシュマンGMがその一端を明かす。「アグレッシブに獲得を狙う球団がいくつもあった。彼はもっとビッグマネーを手にしていた可能性があるが、それを放棄してチームに戻ってきてくれた」。米メディアによると、契約は1年で年俸1500万ドル(約12億円)。複数年の大型オファーを用意したとみられる他球団を選べば、倍以上の年俸が確約されていたはずだ。

 1年契約は、双方にメリットがあった。ヤ軍はチーム総年俸を抑える方針で、当初はクオリファイング・オファーという新制度で1330万ドル(約10億6400万円)を提示。これを拒否した黒田は他球団の動向を見ながら、ヤ軍との交渉も続けていた。「いずれは広島に恩返ししたい」という日本球界復帰の希望があることから、最終的には「単年」の思惑が一致した。

 黒田が重視したのは好条件でなく、今年得た充実感かもしれない。移籍1年目の今季を振り返り「プレッシャーを感じ続けてきた。ニューヨークの家にベランダがなくて良かった」と告白した。自分を追い込みながらも16勝11敗、防御率3・32の好成績をマークした。勝利数と投球回数(219回2/3)はチーム最多で、自己ベストだった。名門軍団でしか味わえない気持ちの高ぶりがあった。

 シーズン直後、苦楽を共にした主将ジーターから「来年絶対戻ってきてくれ」とメールをもらい、感銘を受けたという。プロ意識の高いチームの一員として、今年逃した頂点を目指して再チャレンジする。