いちずなヤンキース愛を貫いた。FAになっているイチロー外野手(39)が14日(日本時間同深夜)、ヤ軍と2年契約で残留合意した。複数の地元メディアが報じたもので、2年総額で1300万ドル(約10億4000万円)。フィリーズとジャイアンツからはヤ軍を上回る好条件を提示され、今季1800万ドル(約14億4000万円)から大減俸になっても、ワールドシリーズ制覇の近道として残留意思は最後まで揺らがなかった。

 プロ22年目の開幕戦は大方の予想通り、ピンストライプのユニホームで迎えることになった。相思相愛だったイチローとヤンキースが、2年契約の円満残留で決着した。

 米主要メディアはこの日、両者が2年総額1300万ドルで合意したと報じた。平均年俸にして650万ドル(約5億2000万円)は今季の約3分の1だが、出場試合数などに応じてインセンティブ(出来高)が付く可能性が残されている。当初は1年契約の年俸500万ドルと伝えられたが、今FA市場は各ポジションとも人材難によりインフレ相場で展開。通算打率2割4分4厘、今季73安打のゴームズ外野手が2年1000万ドルでレッドソックス入りするなど、球団内でもイチローの条件を見直すべきとの声が上がったという。

 ワールドシリーズ後に初めてFAになったイチローだが、7月の移籍後から一貫してヤ軍に居心地の良さを感じており、残留を最優先に考えていた。それでも「誘惑」がなかったわけではない。地元紙ニューヨーク・デーリーニューズ電子版はこの日、「2チームの提示条件はヤンキースより良かった」と争奪戦の舞台裏を明かした。ともに右翼手を探すフィリーズが2年1400万ドル、今季世界一のジャイアンツは2年1500万ドルでオファーし、残留交渉に横やりを入れてきたという。代理人アタナシオ氏もヤ軍側の鈍い動きに、「ヤンキースの事情はわれわれに関係ない。複数球団と話をしている」と不満を募らせた。だがプレーオフでタイガースに敗れて今季を終えた試合後、イチローは「本来持っている気持ちを思い出させてもらった。この場所には感謝しかないです」とヤ軍への恩義を口にしたように、他球団と本格交渉に発展することはなかった。

 正式契約にはまだ健康診断をパスする必要があり、手続きのためイチローが再渡米したという情報もある。スウィシャーのFA移籍が決定的で、来季は慣れ親しんだ右翼が定位置。来年4月1日(日本時間同2日)、宿敵レッドソックスを迎えるヤンキースタジアムで、ヤ軍で初のフルシーズンが幕を開ける。