<メッツ1-6タイガース>◇23日(日本時間24日)◇シティフィールド

 前日22日(同23日)にメッツと契約した松坂大輔投手(32)が、昨年10月3日以来となるメジャーのマウンドに戻ってきた。タイガース戦に先発。2回までに2本塁打されるなど5回6安打5失点で敗戦投手となり、復帰戦を白星で飾れなかった。次回は28日(同29日)のフィリーズ戦で先発予定。

 待ち焦がれた年月の長さと思いの強さが、マウンドに立った瞬間、松坂の体内で緊張感に変わった。甲子園決勝、WBC、ワールドシリーズなどの大舞台を経験してきたが「自分の中では初めて」と言うほどだった。「どういう感じで投げているのか、正直分からなかった。地に足が着いていないという感じでした」。大きなスタンド、観客の声、独特のにおい…。五感すべてで、メジャーを実感した。

 待っていたのは、メジャー最強打線の手荒い出迎えだった。1回、1死からハンターにソロ本塁打。2回には昨季の3冠王カブレラに、左翼席へ豪快な3ランを運ばれた。2回までに5失点。「打たれたことによって目が覚めたという感じです。やっぱりメジャーだなと」と切り替えた。ベンチへ戻ると、新人捕手ダーノーと話し合い、マイナーで投げていた緩急をつける配球に変えた。3回以降は、時速115キロ前後のスローカーブを交えてストライクを先行させ、いずれも3者凡退。本塁打以降は、1人の走者も出さずに5回を投げ終えた。

 電撃移籍で、しかも中3日。前日、球場で軽く練習しただけ。だが、メジャーのマウンドに立つ喜びは何にも替えがたかった。4月下旬、メジャー昇格を目前にして左脇腹を痛め、チャンスを失った。「落ち込みました。自分の中ではきつい時期でした」。復帰後、少しずつ調子を上げたが、朗報は届かない。それでも、諦めることだけはしなかった。熟考を重ねた末、移籍を決断。メ軍で思いをかなえた。

 復帰戦で白星はつかめなかった。反省点はあるが、マイナス思考はない。「やっぱり自分はここにいたいんだな、と強く思いました。今の僕に先を見る余裕はない。大事なのはこれから。当然、プレッシャーもありますが、いろんなプレッシャーの中で生きていきたいです」と奮起を誓った。メジャーでしか味わえない緊張感。324日ぶりのマウンドで大事なものを思い出した。(ニューヨーク=四竃衛)