<ア・リーグ優勝決定シリーズ:タイガース3-4レッドソックス>◇17日(日本時間18日)◇第5戦◇コメリカパーク

 【デトロイト(米ミシガン州)=四竃衛】上原の完璧セーブでレッドソックスが王手をかけた。ア・リーグ優勝決定シリーズ第5戦は、レ軍がタイガース相手に1点差で逃げ切り勝ち。対戦成績を3勝2敗として07年以来6年ぶりのワールドシリーズ進出まであと1勝とした。1点リードの8回1死から救援した上原浩治投手(38)が、1回2/3を無安打無失点2奪三振に封じ、ポストシーズン通算4セーブ目。今シリーズは1勝2セーブでMVP有力候補に浮上した。第6戦は19日(同20日)、ボストンに舞台を戻し、レ軍バックホルツ、タ軍シャーザーの両先発で行われる。

 与えられた役割が重くても、マウンド上の上原は顔色ひとつ変えずに、いつものような快テンポで打者と向き合った。出番は、1点リードの8回裏1死。試合終了までの「5アウト」が、両肩にのしかかった。「半分は開き直りです。打たれたって知らない。そんな感じで投げてますから」。そんな言葉とは裏腹に、責任感はだれよりも強い。8回を2者連続三振で仕留めると、9回も3者凡退。最後の打者イグレシアスには、第1戦で安打を打たれたフォークではなく、粘られても9球中8球で速球を投げ込んだ。その結果、力ない二飛に打ち取ったのも、心の熱さとは対照的な冷静さがあったからだった。

 イニング途中からの登板は、6月抑えになったときから監督と話し合って了解、経験している。さらにプレーオフ開幕後は、僅差の場面ばかり。それでも、周囲の期待が高ければ高いほど意気に感じるのが、上原の気質だった。「あっぷあっぷだった。精神的にもしんどいですからね。球場の雰囲気も全然違いますしね」。胃が痛くなるような登板の一方で、勝利の瞬間、重圧から解放される快感が格別だからこそ、ここまでこん身の力を振り絞ってきた。

 速球とフォークだけで並み居る強打者を手玉に取る。相手打者の狙い球が分かるかのような姿から「NINJA(忍者)」と命名したロス捕手は、興奮気味に言う。「どんなことがあっても、コージのことは年間通して100%信じている。そこには自信があるんだ」。基本的に球種、コースの選択は上原の意思次第。全幅の信頼を受ける男は、極限の重圧の中とはいえ、ひるむわけにはいかなかった。

 敵地で3勝2敗と王手をかけ、あとは本拠地で決着をつけるだけ。今シリーズは1勝2セーブと全白星に貢献しており、MVPの最有力候補にも挙げられる。「(スイッチを)入れたら投げるのは分かってます。その点は中継ぎの人たちよりも精神的には楽じゃないですかね」。疲れはあっても、まだ余力はある。地区優勝、地区シリーズに続く3回目の胴上げ投手が、目前に迫ってきた。

 ◆6年ぶり5アウト

 レッドソックス上原が8回1死から5つのアウトを取ってセーブを挙げた。ポストシーズンで1回2/3以上を投げてセーブをマークしたのは、球団では07年ワールドシリーズ第4戦パペルボン以来3人目。