<ワールドシリーズ:ジャイアンツ3-1レンジャーズ>◇第5戦◇1日(日本時間2日)◇レンジャーズボールパーク

 【アーリントン(米テキサス州)=大塚仁、四竈衛】サンフランシスコ・ジャイアンツが、テキサス・レンジャーズを4勝1敗で下し、1954年以来56年ぶり6回目の世界一の座に就いた。王手をかけた第5戦で、先発ティム・リンスカム投手(26)が8回3安打1失点と力投し、レ軍クリフ・リー投手(32)とのエース対決を制した。なお、MVPには決勝3ランを放ったエドガー・レンテリア内野手(35)が選ばれた。

 敵地に充満していたため息が、いつしかジ軍ナインへの拍手に変わった。歓喜の輪の中で、エース対決に投げ勝った先発リンスカムが人さし指を掲げ、MVPのレンテリアは同僚の肩に顔をうずめた。「輝いてるね」。チャンピオントロフィーに触れたリンスカムは、少年のような笑顔で言った。ニューヨーク州マンハッタンに本拠地があった54年以来56年ぶりの栄冠。58年にサンフランシスコへ移って以来初の世界一は、確固たる信念を貫いた組織力の結晶だった。

 02年、Wシリーズに進出した際はボンズ、ケントら強打者が主体。だが、第7戦でエンゼルスに敗れ、あと1歩でリングに届かなかった。そこからブライアン・サビーンGMを中心に再建が始まった。投手を中心とした守りの野球に主眼を置き、体質改善に取り組んだ。

 今ポストシーズンで先発したリンスカム、ケーン、バムガーナーはいずれも02年以降のドラフト1巡目。04年27巡目のサンチェスを含め27歳以下の生え抜き4人で今ポストシーズンのローテを支えた。抑えウィルソン、中継ぎロモもジ軍ひと筋で、今季から正捕手となったポージーは08年のドラフト1巡目。「僕らは一緒に学び合いながら成長してきたんだ」(ケーン)。優れたスカウティングと若手育成システムでチーム基盤を再構築した。

 その一方で、大金を投入することなく、底力のある他チームのベテランを補強した。リーグ優勝決定戦MVPのロスは、8月にウエーバーで放出された後、ジ軍で復活。長年マイナーで低迷していた1番トーレス、途中解雇されたバレルらを再生し、不足したパズルのピースを埋めた。

 ヤンキース、フィリーズのような大補強ではなく、育成と再生でつかんだ世界一。ボウチー監督は言葉を震わせながら言った。「この時点で監督でいられたのは幸運だ。このチームを誇りに思うよ」。本命不在の近年メジャーで、名門ジ軍の復活は、チーム再建のお手本となるに違いない。