運命を変える雨が降り注いだ。楽天ドラフト5位の入野貴大投手(26=四国IL・徳島)が26日、3月1日のソフトバンク戦にスライド登板することが決まった。先発予定だった韓国・斗山との練習試合が雨天中止となり、ドラフト1位安楽智大投手(18=済美)より先に大役が回ってきた。大久保博元監督(48)が「高村コーチから、入野でいきたいと。チャンスだよね」と、当初予定されていた辛島を押しのけて、先発が決まった。

 月給約10万円、独立リーグに7年間在籍し、はい上がってきた。アルバイトや高知の実家にあるミカン畑を手伝いながら、上のレベルを目指し続けた。「給料が安くても、生活が苦しくても、野球にかけるしかなかった」と1年1年が背水の勝負。楽天入りを果たした今も、当時の気持ちを忘れないように、ミカンをイメージしたオレンジ色のグラブを使用する。

 そんな苦労人にとって、願ってもない好機だ。昨年の日本一王者を相手に結果を残せば先発ローテが見えてくる。大久保監督は「プロで通じるか、先発6番手をつかめるかだよね」と明言。対外試合では16日のKIA(韓国)戦で2回3安打1失点だった。最速153キロを記録する直球をアピールできれば、先発争いに食い込むことができる。入野は「『当たって砕けろ』で自分の投球を見せられたらと思う。とにかく楽しみです」と純粋に喜んだ。

 対戦したい打者は「入団会見でも言いましたが、柳田です」と同い年の強打者を真っ先に挙げた。スコアボードにみかんのように丸い0を並べ、先発入りを収穫する。【島根純】

 ◆入野貴大(いりの・たかひろ)1988年(昭63)11月26日、高知・香南市生まれ。小4で「桜ケ丘スポーツ少年団」で野球を始める。岡豊(おこう)高の3年春から本格的に投手。プロ育成野球専門学院を経て、08年に四国IL・愛媛に入団。昨年、同リーグの徳島に移籍。趣味は温泉・銭湯巡り。180センチ、78キロ。右投げ左打ち。契約金3000万円、推定年俸700万円。背番号50。座右の銘は「慌てず焦らず諦めず」。

 ◆楽天の先発事情 松井裕が中継ぎ転向したために、競争が激しい。則本、辛島はほぼ確定。しかし、昨季8勝7敗でローテを支えた塩見はキャンプ初日にインフルエンザで離脱。出遅れている。ここまでの対外試合では戸村、横山が結果を残しており、ローテ入りが濃厚。先発5枚目、6枚目が未定の状況。