広島前田健太投手(26)が三度目の正直で、今季初勝利を挙げた。巨人菅野とのエース対決で、7回を投げて6安打無失点の力投。ここまで勝利に恵まれなかった右腕は、この日の援護も初回の1点による「スミ1」だったが、2回以降毎回走者を背負いつつ踏ん張り、チームを2連勝に導いた。

 プレゼントは今季2度目の連勝だけではなかった。2万6796人が見守ったお立ち台。前田は突然、後ろポケットから白いTシャツを取り出した。マイクを向けられ、満開の笑顔で説明を始めた。

 前田 僕は絵が得意なので、今さっき描きました! 急いで描いたのであまり納得はしていないんですけど。これからマツダスタジアムでヒーローになったら、毎回プレゼントします! 

 前田画伯が描いたのはマウンドで投げる自身と15年初勝利の文字。開幕前から考えていたプランだった。開幕戦では披露できなかったが、本拠地2戦目で本領を発揮。開幕投手を務めた10年以降では3戦目での初勝利は最も遅い。だが7連敗後に連勝をプレゼント。その価値は十分だ。

 絶好調ではなかった。ボール先行の投球で3者凡退は1回だけ。4四球を与え前半5回までで90球を要した。だが再三ピンチを背負っても「冷静に考えられた」。得点圏に走者を背負っては、アウトを重ねるごとにガッツポーズを繰り出す。7日に大瀬良が140球の熱投、前日8日に野村が粘り「気持ちの伝わる投球をしてくれた。先輩として負けられなかった」。7回6安打無失点で続いた。

 「野球をするだけが僕たちの仕事じゃない。ファンあっての、僕らなので。仕事です。喜んでもらいたいと思っている」。トレーニングが最優先であることに変わりはない。だがファンサービスも優先事項の1つだ。足を運ぶ理由が増える。それが、エースの役割でもある。「10枚はいきたいですね」。魂の投球とヒーローTシャツは、前田そのものだった。【池本泰尚】