不調でも勝つ術を知っている。広島黒田博樹投手(40)が、本調子ではない中、10年ぶりの適時打を記録するなど投打の活躍で2勝目を手にした。阪神打線を相手に球数を要したが、要所を締め、6回まで復帰後最多の116球。7安打3四球も2失点にまとめた。チームを今季初の敵地勝利&3連勝に導いた。
勝利への執念から体が反応した。6回。2点を勝ち越し、なおも無死満塁。黒田に打席が巡ってきた。メッセンジャーの外角変化球に体をぶつけるようにバットを出した。「1点でも多く取れるように」という一心で捉えた打球は、一塁手ゴメスの横を抜けた。05年年5月3日阪神戦(甲子園)以来の適時打に「新井のタイムリーは大きな場面で出た。けど、僕もいい場面で打てました」と笑った。打撃は苦手というが、過去にはセーフティーバントを試みたこともある。勝利に貪欲な姿勢が、この男の根底にある。「チームとして打線がつながって勝てたことが大きい」。9番目の打者として、一役を担った。
この日の投手黒田にとっても、大きな追加点だった。復帰後初の阪神戦。立ち上がりから慎重な投球が続いた。開幕から2戦は100球未満で7回を投げ切り、1イニング最多投球数は20球だった。しかし、この日は2、4、6回と20球を超え、6回は28球を要した。「球の出し入れをしようとしたが、ちょっと細かいところでボールになった」。1点リードの2回は1死から福留にフルカウントから投じたツーシームを右翼席へ運ばれた。微妙な制球に苦しんでいた。不調の中、自身の一打も勝利にプラスとなったはずだ。
ただ、苦しみながら、要所では大胆に攻めた。4回、上本に対して復帰後最速152キロを計測。「いつ腕が飛んでもいいと思って投げている。目いっぱい腕を振りました」。6回1死満塁では追加点を許さなかった。7安打3四球も、慎重さと大胆さで2失点でしのいだ。
試合前のスコアラーらとのミーティングは、黒田が先発の中で最も長い時間を使う。ビジターでは通常球場で行われるが、この日は宿舎で行った。米国で続けてきた「黒田ノート」を持参し、打者の傾向と対策を記す。この日も熱心にペンを走らせた。投球だけでなく、苦手な打撃から準備まで妥協を許さぬ男が、広島に勢いをもたらした。【前原淳】



