僕には「打」があります! 阪神梅野隆太郎捕手(23)が1号ソロをぶち込んだ。3回の先頭打者で難敵・中日バルデスの外角直球を一振り。打球は右中間に上がった。

 二塁を回ると1度は走るのをやめた。「感覚的には良かったです」という打球は本塁打か微妙だった。振り返ると二塁塁審の腕が回っている。「外寄りのボールに対してうまくたたくことができました。逆方向ですから」。ギリギリで届いたアーチは昨年8月17日DeNA戦(横浜)以来240日ぶり。風のないドームでの1発は「打てる捕手」であることを証明した。

 梅野にとって仕切り直しだった。直前の12日広島戦では6連敗中のチーム状況もあり、スタメンマスクをベテラン藤井に奪われた。目標だった「全143試合出場」はわずか14試合目でストップ。悔しさを味わい迎えた最初の打席だった。

 2年目の今季、本拠地甲子園で打席に入る際にかかる登場曲を変更した。歌手は1年目と同じ大原桜子(19)。選んだのは「頑張ったっていいんじゃない」という曲だった。その中に「だからもっともっといけるかも! 1人じゃないんだ」というフレーズがある。「明るい感じがいいなと思って。歌詞が自分に重なるところがあるかなと思ったんですよ」。偶然にも前日13日には、同じ故郷福岡を離れて奮闘する友人と再会して刺激を得た。歌詞を体現した本塁打はリスタートの合図になった。

 藤井には安定感や信頼感がある。そんな先輩にも負けない梅野の武器がパンチ力。サヨナラ敗戦の悔しさの裏で、確かな感触が両手に刻まれた。【松本航】