ハマの4番がこれ以上ない存在感を示した。DeNA筒香嘉智外野手(23)が3回、リーグトップに並ぶ6号、自身初のグランドスラムを右翼ポール際へたたき込んだ。打点も22に伸ばし、本塁打と合わせて“2冠”。7連敗を喫しながらも不動の4番、そして主将として打線をけん引。2連勝に導いた男のバットが、再びチームを波に乗せる。

 まさに4番の一振りだった。1点リードの3回無死満塁。筒香は甘く入った初球スライダーを逃さずたたいた。ライナーで右翼席に飛び込んだ打球を見届けると、表情を変えることなくダイヤモンドを1周。「打った瞬間、いったと。いいイメージだけして、中途半端にならないように、思い切り振っていこうと思って打席に入りました」と、力強く振り返った。

 迷いを断って打席に立ち続ける。1回の第1打席。カウント0-1から内角高めのスライダーを打ち損じた。右翼手の失策で出塁こそしたものの「ちょっとやられていた」と悔しさをあらわにした。そして迎えた3回の2打席目。絶好機に凡打はできない思いはあったが、「迷うところでしたけど思い切って、どっしりいこうと思った」と、初球から振り切った。強い決意が、打球に乗り移った。

 主将と4番を託された今季。この日の言葉どおり、「自信を持ってどっしりと」とテーマを掲げる。チームが7連敗に沈む時も、この覚悟を忘れなかった。「自分が不安そうなプレーをしたら、みんなに影響してしまう。連敗といってもまだ借金は2や3。みんな今年は今までと違う、と思っている。自分がジタバタしない姿を示さないといけないと思っています」。打撃の調子がたとえ良くはなくても、決して下を向くことはない。

 そんな姿勢を中畑監督も感じ取る。「今日は一番欲しいところで打ってくれて、勢いをつけてくれた。結果を恐れず、初球を振る勇気をたたえてあげたい。さすが4番」と目を細めた。

 これで本塁打と打点の“2冠”だが、慢心はない。プロ初の満塁弾にも「前のみんなが塁に出てくれたおかげ」と感謝だけを口にした。「自分の成績より勝ったことがうれしい。これからも試合を決める一打にこだわっていきたい」。最後まで表情を崩さなかった23歳の主砲。重責を担う男に、風格が漂い始めた。【佐竹実】