負けないルーキーだ。巨人先発の高木勇人投手(25)が7回を投げ被安打3、1失点で4勝目を挙げた。4月に4勝をマークした新人は、98年の広島小林幹以来。巨人では60年の堀本、青木以来、実に55年ぶりの快挙となった。5回に本塁打されたヤクルト畠山に対し、7回の打席ではインコースを多投。自力で局面を突破する力が光った。首位ヤクルトを相手に同一カード3連敗を阻止し、ゲーム差を1とした。

 高木勇に迷いはなかった。7回1死一塁、カウント1-1からの3球目。前の打席で本塁打を浴びた畠山に、インコースの直球を選択した。捕手小林のサインに力強く首を縦に振る。一呼吸した後、重たい直球を投げ込んだ。143キロに反応させず、1-2と追い込んだ。「インコースに投げようと思った」とさらに厳しいコースを突いた。142キロの直球は3球目よりもっと内側。どん詰まりの三飛に打ち取った。「畠山さんはいいバッターなので、しっかり投げることができて良かった」と動じず投げ込んだ結果に満足した。

 カットボールに近い軌道で変化する「高木ボール」だけじゃない。内角の直球にも強い自信を持っている。内角打ちの名人、阿部も「うちの投手の中で内角を一番上手に使えるのは高木勇人。球威もだけど、とにかくコントロールがずばぬけている」。菅野でも杉内でもない。ルーキーの名前を挙げた。

 針の穴を通すコントロールは、三菱重工名古屋時代に練習を重ねて生まれた。休日にチームメートは買い物やデートに行く中、高木勇は捕手を誘い、ブルペンに向かった。100球近い投げ込みで打者を想定し、外角、内角のギリギリを投げる練習を繰り返した。「投げていた方が落ち着くので」。回を重ねるごとに甘くなる球も減った。骨太の下地があるからこそ、プロの舞台でも勝負球として使うことができた。

 大胆かつ丁寧に投げ分け、7回3安打1失点1四球で4勝。巨人で4月に4勝は新人では55年ぶり。3、4月の月間MVPを射程圏内とし、内田寮長と交わした、特別ご褒美をゲットした。「『勝ったらオムハヤシを作ってくれる』と言ってくれたので、明日はオムハヤシを食べたいと思います」と大好物が昼食に決まり笑みが止まらなかった。「高木ボール」だけじゃない。どんな場面も厳しくインコースを投げ切れる直球を持つ。高木勇の快進撃はまだまだ続く。【細江純平】

 ▼ルーキー高木勇が早くも4勝目を挙げた。巨人の新人で無傷の4連勝は07年金刃以来7人目。4月中に4勝以上した新人は98年小林幹(広島=4勝)以来で、巨人では60年に堀本が6勝、青木が5勝して以来、55年ぶり。ドラフト制後(66年以降)では80年木田(日本ハム)98年小林幹に次いで3人目だが、白星の内訳は木田が先発3勝、救援1勝で、小林幹は救援4勝。4月中に先発で4勝した新人は61年権藤(中日)以来となり、ドラフト制後では高木勇が初めてだ。61年権藤は新人記録の35勝を挙げたが、高木勇は何勝するか。