「男・村田」はいかなる逆境にも、己の力ではい上がる。巨人村田修一内野手(34)が2号ソロ本塁打を放ち、勝利に貢献した。中日4回戦は2試合連続でスタメンを外れるも、坂本の負傷交代で2回から途中出場。1点リードの4回、左翼席に意地のアーチをぶち込んだ。原監督にゲキを注入されるたびに、結果ではね返し続ける男が、この日も打たれ強さを発揮。ヤクルトが敗れ、再び首位に並んだ。

 「村田コール」を聞きながら、ゆっくりとお立ち台に上がった。目に映ったスタンドは温かく、まぶしかった。汗を滴らせ、村田はファンに胸の内を伝えた。「本来の姿じゃない自分で野球をしているのは、すごく悔しいですし、歯がゆいですけど、こういう姿でも応援してくれるみなさんがいるから頑張れる。これからも、謙虚にバットを振り続けたいです」と語った。

 村田らしく、一振りに魂を込めた。坂本の負傷交代で2回表の守備から出場。1点リードの4回、先頭で打席に立った。カウント2-2からの5球目だった。本人いわく「ちょっと抜けた」という低めの変化球をフルスイング。東京ドームでは今季初アーチとなる2号ソロを左翼席に運んだ。中日先発の大野は試合開始前の時点で、防御率はリーグトップの0・56。ここまで被本塁打0の「鉄壁」左腕を攻略した。

 観戦した家族に力強い父親の姿を届けた。不調で3月中旬に2軍に降格。開幕直前に昇格したが、本来の姿ではなかった。構え、スタンス、足の上げ方などの打撃フォームを試行錯誤。グラウンド上での戦いざまはたくましかったが、体は正直だった。「うどんが大好きで、ナイターに行く前には2玉は食べるのに、この間は0・5玉ぐらいで…」。心配する絵美夫人を最高の結果で安心させた。

 技術的な試行錯誤は重ねても、己の心を信じると決めた。そう決心したのは、3月29日の夜だった。開幕から3試合無安打。ベッドに体を預け、ふと目をつぶった時、ある思いが芽生えた。「これは試練なんだ、と。選手としての真価が問われているってね。2軍に落ちて、自分を見つめ直す中で形を作った。ここで迷うか、信じるか。俺は信じてやると決めたんだ」。

 必ず、はい上がる男だと信じる原監督は「いいホームランでした。ただ、その後の打席でも出れば、村田の株はストップ高までいくだろうけどね」とさらなる期待を込めた。「(試行錯誤が)間違いじゃなかったと言えるのは、引退してから。いろんな思いはありますけど、野球ができる喜びを感じながら、野球に打ち込みたいなと思います」。男・村田が復活ののろしを上げた。【久保賢吾】