ソフトバンク摂津正投手(32)の敗戦の中にも収穫があった。2回にオリックスのT-岡田に対し、カーブを2球続け、左翼線への二塁打を打たれた。ここから3連打を許すなど、2点を先制される。3回にも同じ打者に再びカーブを痛打され、3点目を失った。この日もエースは背信投球を繰り返したかに見えたが、工藤公康監督(51)の評価は違った。

 「3点は投手に責任があるとは思わない。今までの摂津とは違う姿を見せてくれた。気持ちが表に出ていた。評価してあげたい」

 ここ2戦は球数も多く、6回に失点していた。指揮官は「リズムが悪い」などと厳しい言葉を投げかけ、エースの奮起を求めていた。工藤監督は独りよがりに投げることを嫌い、打者との対決をどう制するかを大事にする。だから、悪戦苦闘して6回で力尽きる摂津に対し、辛口の評価を下した。この試合では、失点した回を除き、球数も少なく、テンポもよかった。内角を思い切りよく攻める場面もあった。8回を113球で4失点。今季初完投だ。マウンドでの投げっぷりに、工藤監督は変化を認めた。

 もちろん、エースと呼ばれる男に満足感はなかった。「リズムが悪かった。(先制されると)苦しくなりますね。僕の責任です」。4月11日の日本ハム戦での2勝目を最後に、3連敗。前夜の逆転勝利の流れを引き継げず、敗戦の責任を背負い込んだ。指揮官が見た「変化」が次にどう出るか。3位に後退したチームに勢いを与えるのは、エースの復活星だ。【田口真一郎】