今年もまた地元のヒーローが主役になった。愛知・豊橋出身の中日藤井淳志外野手(34)が1点を追う7回に逆転の1号3ランを放った。しかも34歳のバースデーをかっこよくアーチで飾った。昨季は延長サヨナラ弾を放った故郷で、またも大仕事。持ってる男の活躍でチームは4連勝。5月1日以来の貯金1だ。

 豊橋球場に詰めかけた1万756人の観客が「藤井劇場」に酔いしれた。試合が終わっても地元のスターをたたえる声援が鳴りやまない。2年連続となるヒーローインタビュー。藤井は「これだけいい結果が出るとは思わなかった。みなさんの声援のおかげ」と感謝。そして「豊橋を離れて16年になりますが、豊橋大好きです!」と絶叫した。

 筋書きのないドラマだった。クライマックスは1点を追う7回だ。2死二、三塁。藤井は6球目フォークをフルスイングした。「自分で決めるというよりも、自分のパフォーマンスを出すということだけを考えた。風も味方してくれた」。打球は声援に押されるようにふわりと舞い上がり、左翼席へ。藤井は何度も跳びはねて喜んだ。

 豊橋球場は“パワースポット”だ。昨季は8月5日広島戦で延長サヨナラ本塁打を放ち、故郷に錦を飾った。この日も6回2死二塁の場面で代打出場すると「予想以上の声援をもらって力になった」とハッスル。右前適時打を放つと、7回の決勝3ランで2安打4打点。最大5点差のゲームをひっくり返す原動力になった。

 お祭り男の血が騒いだ。偶然にも今年の豊橋開催は、34度目のバースデーと重なった。球団もこのチャンスを放っておかなかった。さっそく記念の応援タオルを用意。4月中旬からインターネットなどで販売を開始すると、前日までに200枚近くが売れたという。親族や友人が集まる年に1度の記念日が「藤井祭り」だった。

 チームも上げ潮ムードだ。4連勝で貯金は1になった。だが、藤井に浮かれた様子はない。「みんな1戦、1戦必死にやっているので、それについていくだけです」と表情を引き締めた。首位DeNAとは4・5ゲーム差。明日22日からは交流戦まで最後のカードとなる巨人3連戦。連勝を7つまで伸ばして交流戦に臨みたい。【桝井聡】