東大が、10年秋の早大2回戦から続いていた連敗記録を「94」で止めた。4-4の延長10回1死二、三塁から4番楠田創外野手(2年=桐朋)の二ゴロ(記録は野選)の間に決勝点。適時打は山田大成内野手(2年=桐朋)の1本だけで6点を奪い、1694日ぶりの白星をつかんだ。

 9季ぶりの勝利を挙げた東大の先発メンバーに、浪人生は6人いた。最速145キロをマークした先発の山本俊投手(3年=西春)の2浪を筆頭に、4番楠田は1年間の仮面浪人の末に入学した。浜田一志監督(50)は「浪人して野球から離れている人もいる。普通は高校生で練習していることを、大学生でやらなくてはいけない」と言う。東大ならではの悩み。今季は内野のボール回しだけで、40分以上費やした日もあった。

 学習塾を経営し「カリスマ塾長」の顔を持つ指揮官。リーグ戦ワーストを更新する86連敗で迎えた昨年オフ。結果につながらなかった2年間の練習を振り返り、「本棚に参考書をたくさん買ったのに、結局1冊をやり切っていなかった」と言った。効率性を求め、できなくても時間で区切っていた過去との決別だった。

 「いい授業(練習)をしたと思っても、生徒の点数が上がってなかったんです。できなければ、一日中でもやらせなければいけなかった。僕も甘かった」

 秀才集団らしく、練習から成功率を算出。徹底的に結果にこだわる内容に変えた。“成績”はトレーニングルームに張り出した。

 <1>投手=制球率を上げる 捕手が構えた位置に何割投げられたか計算。ブルペン制球率8割を目指した。

 <2>野手=ヒット性の打球を打つ 外野にライナー性の打球が飛んでも野手の真正面はアウト。安打性を何割打てたか計算する。

 <3>チーム=ヒット数より得点 成功数(安打+四死球+犠飛+犠打)÷試行数(打席)=打撃成功率。進塁打も1安打とし、9人の役割を明確にすれば、得点につながることを示した。

 毎日数字と向き合うことで、1人1人の意識が変わった。飯田裕太主将(4年=刈谷)や山本俊は、練習後に週1~2回、家庭教師のアルバイトを行う。地元公民館で約2時間。時給は2000円で「バットを買ったりします」(飯田主将)と苦労は絶えない。スポーツ推薦制度はなく、全員が日本最難関の入試を受けて入学。そんな環境を嘆くのではなく、ベストな方法を模索しながら、歴史的1勝を挙げた。【前田祐輔】