傷だらけの中日が総力戦を制した。ナニータが腰痛で出場選手登録を抹消、平田が脚を痛めて先発落ちの大ピンチ。それでも和田が戻った打線が何とか4点をひねり出し、守っては復帰した又吉を含む6投手の継投でソフトバンク打線の反撃を封じ込めた。連敗を3で止めた。交流戦初戦は価値ある白星になった。

 勝った瞬間、一塁側ベンチに喜びと疲労が交わったように見えた。谷繁兼任監督の勝利インタビュー第一声がすべてを表していた。

 「苦しい展開になったけど、何とか勝ててよかったです」

 立ち上がり不安定な大隣を攻め切れない、イヤな展開。だが、3回にエクトル・ルナ内野手(35)の2点適時打で先行すると、1点差にされた直後の4回はエルナンデスの4号ソロ。さらに荒木の遊撃内野安打に敵失が絡んで1点を追加。4-1とした。

 このリードをまさに薄氷を踏む思いでつないだ。先発ラウル・バルデス投手(37)が苦しみ抜いて5回を2失点でしのぐと、6回から継投策に。7回は3番手浅尾が1点を失い、1点差。なおも1死一、二塁。ここで高橋聡が代打明石を1人1殺の空振り三振。そして代打吉村に対しては、この日1軍に戻ってきた又吉をぶつけた。

 「ああいう場面で投げる意味を考えて試合に入った。とにかく腕を振ろうと思った」。スライダーで空振り、148キロをファウル、3球目はボールになるスライダーで空振り。右手をグイッと握り締めた。監督は「持ち味の気持ちを前に出していく投球をしていた」と不振が続いた右腕の変化の兆しに言及した。8回も続投の又吉が2死一、二塁をしのいで、9回は福谷が併殺締め。6投手によるリレーが完成した。

 試合前から暗雲が漂っていた。3連敗で迎え、切り替えを図りたい交流戦初戦。だが練習前にナニータが腰痛を発症し、急きょ出場選手登録を抹消。さらに練習後には3番平田の故障も判明し、今季初欠場。2軍での治療が濃厚になった。そんな窮地で、まさに全員野球で強敵ソフトバンクに立ち向かった。

 ルナはお立ち台で「これからもどんどん勝っていく」と約束し、監督は「今日のようないい試合をして勝ちたい」。ピンチをチャンスにできれば本物の強さに変わっていく。【柏原誠】