黒田の仇(かたき)を討て! 広島丸佳浩外野手(26)の先制11号ソロは空砲に終わった。8回2死からバックスクリーン左に運んだ会心の一撃も、チームは今季5度目のサヨナラ負け。自身12戦連続安打にも笑顔はまったくなかった。丸だけではない。新井がシアーホルツが菊池が、巨大戦力に向かっていく姿勢を前面に出した。痛い黒星に違いない。だが発奮材料とするには十分な悔しさだ。やり返さなきゃ、男が廃る!

 速い、速い。丸のベースランニングは、本塁打の時のそれではなかった。丁寧に踏み足を合わせ、わずかな時間で終わらせた。両チーム無得点で迎えた8回2死。巨人高木勇のシュートをバックスクリーン左に運んだ。両チームのゼロ行進を一振りで終わらせた。気合満点の男は、ハイタッチも速攻だった。

 「いい形でスイング出来たと思いますが…。悔しいです。悔しい。もっと野手が打って、黒田さんを楽にさせてあげられれば」

 今季5度目のサヨナラ負けを喫し、試合後は唇をかみ続けた。ただこれで自身は12戦連続安打。チームトップの11発の男が1番に座り、打線が復調した事実は揺るがない。「打ち損じが少なくなってきている。思い通りのスイングが少しずつ出来てきているのかな」。ただ最後はやはり「悔しい」と言い、バスに乗った。

 マウンドに立つ黒田から伝わるものがあるのだろう。丸だけではない。1人1人が、プレーに魂を燃やしていた。6回2死二塁。新井は一、二塁間へゴロを放った。巨人立岡がダイビングキャッチすると、新井も一塁へヘッドスライディング。アウトとなったが、気迫を前面に出した。ただ敗戦に「もっと点を取って援護したかった…」。主砲も喪失感にかられていた。

 捕手石原は体を投げ出してワンバウンドを止め、助っ人のシアーホルツも、悠々スタンドに飛び込むファウルボールをフェンスまで全力で追った。ベンチは9回に万全を期して両翼に鈴木誠、野間を投入。節目の今季70試合目で、黒田を勝たせようと、混セを抜け出そうと必死だった。

 借金5となり、緒方監督は「負けは痛いよ。(黒田は)責められない」と懸命に前を見つめた。ショッキングだが、反攻への十分なエネルギーがたまったはずだ。食らいつき、闘志を燃やし続ける。野手陣が必ず黒田の仇(かたき)を討つはずだ。【池本泰尚】