日本ハムのドラフト1位、有原航平投手(22)が、楽天13回戦で4勝目を挙げた。9回に松井稼に被弾しプロ初完投こそ逃したが、プロ最長の8回1/3を4失点でしのいだ。自身の連敗を2で止め、チームの3連勝に大きく貢献。試合のなかった首位ソフトバンクとのゲーム差を4に縮めた。

 振り返った。白いボールは、えんじ色に染まるスタンドに消えて見えなくなった。あと、アウト2つ。プロ初完投勝利目前の有原が、楽天の代打・松井稼に痛恨の2ランを浴びた。「甘くないなと。もっともっと練習しないといけないです」。交代を告げられ、白いタオルを頭からかぶった。プロ入り最長となる8回1/3を投げ、7安打4失点(自責2)。約1カ月ぶりに手にした4勝目は、悔しさの方が大きかった。

 疲労軽減のため、大谷とともに6月30日の函館遠征を外れ、千葉・鎌ケ谷で調整した。2つ年下だが、相手打者の傾向などを聞く“プロの先輩”。「明日は有原さんが勝ってくれると思います」。お立ち台で気にかけてくれるのも、うれしかった。久しぶりに顔を合わせた2軍首脳陣から「おまえがちゃんと投げれば結果はついてくるんだから」とハッパをかけられた。2連敗して弱気になっていた心を、奮い立たせてくれた。

 スタメンに5人並んだ左打者の胸元を積極的にえぐった。「とにかく腕を振ろう」。2回には自らの野選も絡んで無死満塁の窮地に立ったが、阿部を150キロ速球で空振り三振に仕留めると、続く三好はこの日最速タイの152キロで三ゴロ併殺打。「今日は1点もやらない気持ちでいきました」。走者を背負ったときほど、強気に攻めた。

 試合終了後、栗山監督から声を掛けられた。「悔しいかもしれないけど、これで一歩前に進むことができるぞ」。早大時代から悩まされた右肘痛。1月の新人合同自主トレでは、ブルペンに入ることすらできず、キャッチボールがやっとだった。「全然投げられなくて、悔しかった」。だがこの日は、最終回のマウンドにいた。9回1死、小斉への4球目は149キロをマーク。「スピードが落ちないで、長いイニングを投げられた」。105球に、収穫がぎっしり詰まっていた。

 半年前は投げられることが喜びだった。地道なリハビリに耐えた今は違う。勝っても、悔しい感情がわき起こる。「今日みたいな試合は最後までいかないといけないと思います。次は完投できるように頑張ります」。昨秋ドラフトで4球団が競合した逸材がやっと、真剣勝負ができるようになった。【本間翼】