指揮官のタクトに選手が躍った。広島打線が1回に一挙5点を奪い、エース前田を強力に援護した。3連勝の裏には、緒方孝市監督(46)の選手起用の妙が隠されていた。選手の体力を奪う夏場の連戦に配慮した采配で、スタメン復帰のエルドレッドが決勝打。借金を2まで減らした。史上初の全球団借金というセ・リーグで、力強く上昇してきたのがカープだ。

 エルドレッドの打球が三遊間を破ると、ベンチの緒方監督は表情を引き締めたまま手をたたいてたたえた。6試合連続となる先制点を奪い、試合の主導権を完全にたぐり寄せた。

 緒方監督 初回の攻撃が全て。マエケンまで打ってくれて5点入った。初回の攻撃として良かった。

 相手のミスにつけ込んだ。ヤクルト先発古野は立ち上がりから大乱調。3四球で満塁の好機を得た。制球に苦しむ相手に4本の単打を浴びせた。最初の一打を放ったのが、エルドレッドだった。

 エルドレッド 投手のコントロールが定まらない中、読みづらかったが、こちらがミスをしないように心掛けた。とにかくインプレーにすれば点が入る場面。むちゃ振りせずに軽くバットに当ててシングルヒットでいいと思って打席に入った。

 状況に応じた準備が好結果につながった。広島は東京で3連戦を戦い、この日広島に帰ってきた。緒方監督は始発の新幹線で東京をたった。監督だけでなく、選手たちも午前中には広島に戻って戦いに備えた。相手は敵だけではない。夏場に入れば疲労との戦いもある。指揮官は、この日の練習中には中崎と話し込むなど、観察と対話によってチームを把握。巨人3連戦の第2戦にシアーホルツを、第3戦にはエルドレッドをスタメンから外して休ませた。

 緒方監督 連戦が続くと調子を維持するのも難しい。疲れを考えてこちらは(選手起用を)やっている。いつケガをするか分からない。ケガをされると怖いからね。

 欠場がリフレッシュとなり、2選手はともにスタメンに復帰した試合で先制点をたたきだした。選手起用もズバリ当たるほど、混戦続くセ・リーグでコイの勢いが止まらない。3連勝で首位まで0・5ゲーム差。借金も2まで減らし、完済も見えてきた。混戦の引き立て役から、主役の座に躍り出る日も遠くはない。【前原淳】