藤浪の奮闘に、4番が特大弾で応えた。阪神マウロ・ゴメス内野手(30)が同点に追いつかれた直後の3回、左翼スタンド最上部付近へ推定135メートル弾をぶちかました。決勝11号ソロ。リーグ戦再開後に好調をキープするスラッガーが、混セとオサラバするためにも打ちまくる。

 横浜スタジアムを覆う灰色の空に向かって、小さな白球が上がった。一塁へ急いで走りだす必要はない。ゴメスも、2万5368人の観衆も、注目は着地点だけだった。「いい感触だったよ。ナイスパワーだね!」。同点の3回2死走者なし。自画自賛の一振りが試合を決めた。

 「高めに浮いてきたボールを一発で仕留めることができたよ。同点にされた直後だったので、いいところで1本打てて良かったね」

 長い滞空時間を経て、ボールはスタンド最上段の広告看板付近に落ちた。あと少しで場外に飛び出る推定135メートル弾。そんな11号ソロにゴメスは大興奮だ。打った感触は、京セラドーム大阪の5階席に放り込んだ、昨年5月21日オリックス戦(推定130メートル弾)が一番だと言う。それでも続けざまに付け加えた。

 「距離に関しては一番飛んだんじゃないかな」

 日本通算37本目。そのトップに値する特大弾は藤浪の背中を押し、打線を8得点に導いた。これでリーグ再開後は42打数17安打11打点で打率4割5厘。交流戦終了時点の64試合で6本だった本塁打は、12試合で5本を記録するなど紛れもない首位の原動力だ。後はどれだけ絶好調を維持できるか。ゴメスはそこへの準備もすでに始めている。

 試合前後のロッカールーム。シーズン当初から、日本製のサプリメントに手を伸ばすようになった。1年目の昨季は143試合に出場も、唯一7月29日のヤクルト戦で欠場。日本特有の蒸し暑さも影響した体調不良で、関係者には「日本の夏をなめていたよ」と漏らしていた。その失敗を繰り返さないために今年、ビタミンやミネラルを錠剤や粉末で補給することを始めた。入団前から使用していた米国製をやめて、トレーナー陣やマートンと協力しながら日々摂取。地道に体を日本仕様に変えている。

 今後は昨季同様に試合前のルーティンをあえて作らず、無理を避ける調整も視野に入る。「デーゲームもナイターも関係なく、1試合1試合やるだけだよ」。首位独走に不可欠なゴメスの快音は、まだまだ続きそうだ。【松本航】