エースの緊急降板を、同学年の4番が救った。巨人亀井善行外野手(33)が3-3の延長10回、サヨナラ2ランを決めた。今季2度目の先発となった内海哲也投手(33)は7回途中で左ハムストリングス(太もも裏)をつって降板したが、3失点にまとめた。亀井が昨年5月31日のオリックス戦でも延長12回に決勝アーチを放った験の良い場所で2連勝に導き、内海は復活への1歩をしるした。82年生まれの投打の軸が、浮上のキーマンになる。

 一塁ライン上に並んだ亀井の目に、笑顔でハイタッチを求める内海の姿が映った。「パチン」と手を重ね、2人で笑い合った。「チームが勝って、良かったですけど、何とか内海を勝たせてあげたかった」。劇的な勝利に沸く中でも、内海を思いやった。

 昨年の記憶を巻き戻したかのような1発だった。昨年5月31日のオリックス戦、昇格直後の一戦で延長12回に決勝本塁打をマーク。勢いに乗って、交流戦MVPを獲得した。4番の重圧と闘う今、この日の試合前に「あの時のように、ゾーンに入ってくれへんかな」と笑ったが、幸運を呼び込む「カメの聖地」で復活を印象づけた。

 2人は良き仲間として、良きライバルとして、刺激し合う存在だった。初対面は中学野球のボーイズでの対戦。長い年月を経て、昨年のオフに実現したのが母校対決だった。上宮太子の亀井が、敦賀気比の内海に勝利したが、試合後、集まったメンバーに誓ったのは今後の活躍だった。

 亀井 もう若くないかもしれんけど、若手に負けへんようにテツと一緒に頑張るわ。

 内海 そうや。まだまだ俺らはやれる、ってところを見せるで。

 がっちりと手を合わせる2人に、拍手が送られた。偶然にも、この日の一戦はあの日と同じ大阪が舞台だった。負傷降板の責任を痛感する内海を元気づける、鮮やかな1発でチームを劇的勝利に導いた。【久保賢吾】

 ▼亀井が通算5本目のサヨナラ本塁打。サヨナラ弾は14年7月30日DeNA戦(京セラドーム大阪)以来で、同じ相手、球場で2年連続、日付も1日違いだった。4番では自身初、巨人では12年8月19日広島戦の阿部以来3年ぶり。巨人で通算5本目のサヨナラ弾は原、清原、松井、坂本、高橋由と並び5位タイ。