ウル虎逆転勝利で首位キープだ。阪神がイエローユニホームを身にまとう「ウル虎の夏」企画の試合となったヤクルトとの首位攻防戦。最大5点のビハインドを背負う苦しい展開だったが、打線は一丸となって逆転勝利。5点差からの勝利は今季初で、2桁得点もクリーンアップの打点そろい踏みも後半戦初。4連勝で貯金は今季最多の4。苦戦を乗り越えた先にきっとVが待っている。

 決勝点は拍子抜けの形で転がり込んだ。7-7の8回2死満塁で、ゴメスが左の手袋を外して審判にアピール。大逆転の決着は、押し出し死球だった。だが少々物足りないファンを喜ばせたのは、続くマット・マートン外野手(33)の一撃だ。ロマンから猛打賞となる2点タイムリーを中前に運び、今季初の5点差うっちゃりを完結させた。

 マートン 今日一番大きいのは1-6でも全員諦めずに勝てたことだよ。優勝争いしていくために、厳しい試合も諦めずに勝ち続けていくことが大事なんだ。

 黄色の戦闘服で戦う「ウル虎の夏」にふさわしいミラクルは、この男から始まった。藤浪が初回に4失点したが、2回の1点目はマートンの右前打から。藤浪が4回も2点を失い、1-6となってもネバーギブアップだ。直後、15試合ぶりの5号2ランで、この回一挙4点を呼んだ。

 “変心”が生んだ1発だった。カウント3-0からの外角球にバットを投げ、一塁に歩きかけたが判定はストライク。すると次打者席に戻ってスプレーをかけ、間を取った。次の球もボールと判断して歩きかけたが、またストライク。これまでなら不服な判定にイライラし、食いかかる場面もあった。だが、冷静に仕切り直し、直後の6球目を2ランに仕留めた。

 マートン しっかり気持ちを切り替えて、次の1球、次の1球に集中したよ。

 来日6年目、優勝に飢えた助っ人の気概はみんなに伝わった。2点を追う6回は鶴岡、俊介、上本がつないでつないで2死満塁とし、福留がオンドルセクから左前に2点適時打。ついに5点差を追いつき、6失点KOの藤浪の黒星も消した。

 福留 (藤浪)晋太郎がいつも頑張っているから、こういう時にカバーできたのは、チームにとっても、晋太郎にとっても良かったと思う。人間だし、うまくいかない時もあるからね。

 若き右腕の不振もみんなで助け合い、13安打で10得点。4時間14分の激闘を制して4連勝、貯金も今季最多の4に増やした。これで4日からの長期ロードも、貯金を持って出発できる。

 マートン おおきに。あーしんど。でもウイン(勝利)だからだいじょうぶ。

 福留 晋太郎の言葉を使うなら、ウルトラ疲れた。

 両ヒーローの笑顔が充実感であふれた。1年を振り返った時、この逆転劇が優勝の分岐点になっているかもしれない。【松井清員】

 ▼阪神は一時5点差をつけられた状況からの勝利。これは今季最大差逆転勝利。14年4月19日ヤクルト戦(甲子園)で、3回表終了時の0-5から反撃に移り、7-5で勝って以来。今季の逆転勝利は14度目で、これまでは3点差逆転が最大点差だった(3試合)。

 ▼阪神は3番福留2打点、4番ゴメス1打点、5番マートン4打点。チームのクリーンアップ打点そろい踏みは、開幕戦3月27日中日戦での西岡1、ゴメス2、マートン1打点を手始めに今季6度目。今回の3人による同じ並びでは、6月24日広島戦(全員1打点)に続き2度目。クリーンアップ打点そろい踏みの試合で、チームは5勝1敗。