キャプテンの5年ぶりの逆転サヨナラ打で巨人が首位奪回だ。9回、1点差に迫ってなお1死満塁の場面で、3番坂本勇人内野手(26)が左中間を破る逆転サヨナラ二塁打。今季から主将に就任し、自身もチームも波に乗れない中、バットで鼓舞して5連勝に導いた。これで球団史上初となる4試合で3度のサヨナラ勝ちで、いよいよ上昇気流に乗ってきた。

 意を決した。9回1死満塁、ビハインドは1点。巨人坂本は打席に入るとバットを短く持った。中日福谷をにらみつけ、上段に構えた。「相手も苦しい場面だったので、積極的に仕掛けようと思いました」。初球の直球を強振すると、打球は前進守備の左翼手の頭上をライナーで越えた。逆転サヨナラ勝ちを見届け、駆け寄ってきた長野に飛びついた。5年ぶりのサヨナラ打に「久しぶりだったのでうれしい」と思い切り笑った。

 主将1年目。思いがけず、苦しいシーズンとなった。中軸として期待されながら、納得のいく成績を残せていない。バットの構えの位置を変えるなど試行錯誤を繰り返した。体重は86キロから80キロに減った。「心労なのかな」と漏らしたこともあった。

 自分で打開するしかないと分かっていた。交流戦で、同学年のソフトバンク柳田とバット談議を交わした。「軽い方がスイングスピードが上がるで」と勧められた。道具をあまり変えない男が、プロ9年目で初めて900グラムを下回る890グラムのバットを発注した。結局は900グラムから910グラムのものを使用しているが、スイングスピードを高める必要性を痛感していた。

 だからこそ、この日はバットを短く持った。いつもなら、グリップエンドいっぱいに小指をかけるところだった。「長打はいらない場面。コンパクトにいこうって気持ちでいった」となりふり構わずいった。「自分でっていうより、チョーさん(長野)につなごうと思っていました」。自分の型を捨てたからこそ生まれた一打だった。

 今週3度目のサヨナラ勝ちで5連勝。再び首位に浮上した。お立ち台から「いい流れで5連勝できている。明日も勝って、みんなで喜びましょう」と声を張り上げた。「1試合1試合、やることは変わらない。その繰り返しです」。坂本が背中で、巨人を引っ張っていく。【浜本卓也】

 ▼巨人が9回に3点を挙げてサヨナラ勝ち。最終回に2点差以上をひっくり返した逆転サヨナラ勝ちは、09年9月2日横浜戦(3-5→6-5)以来、チーム6年ぶり。坂本のサヨナラ安打は10年9月21日横浜戦以来7本目となり、ビハインドで打った逆転サヨナラ安打は10年6月4日の日本ハム戦に次いで2本目。巨人でサヨナラ安打7本は松井、高橋由らに並び7位タイに進出した。これで今週の巨人は7月29、30日DeNA戦と合わせ3度目のサヨナラ勝ち。巨人は3試合連続サヨナラ勝ちがなく、4試合で3度のサヨナラ勝ちは球団史上初めて。1週間に3度も01年4月13、14日横浜戦、19日ヤクルト戦で記録して以来2度目。