甲子園に描かれた放物線。阪神ランディ・メッセンジャー投手(33)は痛恨の一打に目を向けることなくマウンドに立ち尽くした。試合後、8敗目を喫した右腕は悔しさを押し殺すように1シーンを振り返った。

 「畠山選手の1発が悔やまれます。スライダーが高めに浮いてしまった」

 チーム5連勝を託されたマウンド。しかし7回6安打3失点。127球の粘投むなしく1発に沈んだ。

 3回。1死から山田に、この日最速152キロを中前に運ばれた。嫌なムードが漂う中、迎えるは4番畠山。その2球目。高めに抜けたスライダーを完璧に捉えられると打球は左翼スタンドへ吸い込まれた。360度黄色に染まった聖地が大きなため息に包まれた。

 7月15日広島戦の5回から17イニング続いていた、甲子園での無失点記録も初回でいきなり途切れた。先頭の比屋根に右前打。続く川端にも右前に運ばれ、無死一、三塁。3番山田に中犠飛を浴び、あっという間に先制点を奪われた。4回から、それまでがうそのような投球を見せただけに、悔やまれる立ち上がりとなった。

 次回は中5日で7日DeNA戦(横浜)に登板予定。さらに助っ人右腕は、8月の過密日程にも中5日で登板を続けていく予定だ。「僕は問題なく出来ると思う。短い間隔で投げるのは自分しかいない」。敗戦の中でも、最後には実に頼もしい言葉を残した。この男のフル回転が猛虎のVロードに必要不可欠だ。【梶本長之】